今年に入って、長年趣味として、そして最近ではライフワークとして楽しんでいた「健康太極拳」(正式には「楊名時八段錦・太極拳」http://www.taijiquan.or.jp/ )を、週に一回90分、池袋にあるコミュニティ・カレッジで、10数名の受講生に教えることとなった。というのも、昨年まで講師を務められていたK先生(師範/右写真)が、昨年末に急逝されたからである。
自分に太極拳講師の白羽の矢が立ったのは、特にベテランが多く、先生の思い入れの強い教室であったらしく、他の教室はすべて閉鎖となった中で、長く先生に師事してきた自分を、早くから後任として強く推薦してくださっていたとのことであった。六十の手習どころではなく、古稀を過ぎてからの挑戦で、新米講師としてはいろいろと戸惑うことや失敗もあった。15~20分程度ではあるが講義もあり、レジュメ準備を含めると、想像以上のハードワークであった。それでも、先生の「教えることは学ぶこと」との言葉を思い出しながら、恩返しの意味も込めて、精一杯真剣に、毎回準備も怠らず、講師役を引き受けている。
そもそも、K先生との最初の出会いは、今からちょうど40年前の1月のことであった。新宿にあるカルチャーセンターで、当時はまだ知名度が低かった「楊名時八段錦・太極拳」講座の土曜教室に通い始めた時である。教室で先生は、準師範として講師の補佐的な役割(今でいうティーチング・アシスタント)を担っていらっしゃったと記憶している。また、先生の第一印象は、丸顔で体格も良く、いかにも明るい人柄が偲ばれるおっとりとした風貌の人であった。
以後、毎週一回稽古をともにし、時には春夏に開催される箱根合宿にもご一緒し、40年の長きにわたり交流が続いた。しかしながら、太極拳関連以外の話題は、不思議なことにほとんど会話した記憶がなく、プライベートなことに関しては、お互いあまり知らないという関係だった。
そんな先生が、昨年の夏に急に体調を崩され、救急車で何度か病院にも搬送され、養生のために高齢者施設(ホーム)に入居されることとなった。その後もタクシーで新宿のカルチャーセンターの教室にも顔を出されていた。本当に誠実な方で、太極拳をこよなく愛し、稽古の合い間にふと漏らされた「楊名時太極拳は、私の人生の生きがいです」との言葉通り、太極拳中心の生き様であった。そんな先生の唯一残った教室の講師として、和気あいあいとした雰囲気を守りながら、出来れば受講生と共に、楽しく無心に「健康太極拳」を学び続けられたらと願っている。(7期生 北原)
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