10余年大過なく過ごしてきたが、この1年間は我が人生で「谷」の時期であった。昨年7月コロナに初感染し、早期回復で安堵。暑さを凌いで8月の軽井沢に続き9月に上高地~小布施~志賀高原に出かけたが、財布が無いことに気付いた。家に置き忘れたと思い帰宅後探したがやはり無し。40数年振りの紛失であった。一旦はあきらめたが、2日後横浜駅「忘れ物センター」に出向き問い合わせたところ終着駅の松本駅に財布の忘れ物があるとわかった。財布の形状、乗車日、乗車車両No&座席Noが合致し、取り戻すことができ、日本国の「安全・安心」を実感した。
10月中旬肺炎で入院となり抗生剤点滴では症状改善せず、気管支鏡検査の結果、ステロイド服用に切り替え順調に回復した。富士山を望める個室で不自由は感じなかったが、副作用対応もあり、短期の予定が、結局25日間の入院となり大出費。退院後もステロイドと副作用対応薬の服用を続けたが終了直後の今年1月末、再発した。ステロイド服用再開で回復したが、副作用の「免疫力低下」等もあり、人混みへの外出は引き続き控えることとなった。
2月のドライブで「一時不停止」でゴールド免許(15年間)がブルーに。後日警察から「75歳以上違反者の臨時認知機能検査」通達があり、3月に受験し無事通過した。退院後の半年を振り返ると、毎日の新聞、読書、TV(NHK,BS、Netflix)、早朝ラジオ、ウオーキング、姑と化した女房殿の指導下の家事手伝いに加え時々のドライブやランチ外食を楽しむ日々であった。國分功一郎『暇と退屈の倫理学』風に言えば、「暇ではあるが、退屈ではない」日々を過ごしてきたように思う。
読書では稲垣栄洋著『植物はなぜ動かないか』は面白かった。動物に食べられ放題の植物は知恵や工夫を発達させ強く生き抜いている一例として「美くしき花の誕生」を次に紹介したい。大量の花粉をまき散らしているスギやヒノキなどの裸子植物は。風に乗せて花粉を運ぶ風媒花で、花びらで装飾することよりも沢山の花粉を生産することにエネルギーを使う。裸子植物から進化した被子植物は花粉を捕らえるために、めしべを長く伸ばす。花粉を食べにやって来た昆虫に付着した花粉は別の花のめしべに付着する。昆虫は花から花へと移動する。風任せの送粉に比べれば、ずっと確実なので、花粉生産を節約したエネルギーを使って昆虫を呼び寄せる花びらを発達させ、遂には甘い蜜を用意し芳醇な香りを漂わせるようになった。
花の進化に連れてチョウやハチなどの昆虫が進化を遂げていった。チョウは長い足で花にとまり、ストローのような長い口で蜜を吸う。チョウの体には花粉がつきにくいので、植物にとっては蜜泥棒である。一方ハチは植物にとって最良のパートナーである。働き者のミツバチは花に潜り込み易い形に進化して、花から花へと飛び回り花粉を運ぶ。しかもハチの仲間は頭が良く、同じ種類の花を飛び回ってくれるので、植物にとっては受粉の効率が良い。次に発達させたのが果実である。果実を食べた動物や鳥類によって種子を散布させるという方法を発達させ、あるサインを作りだした。目立つ赤色は「食べて欲しい」、葉っぱと同じ色で目立たなくしている緑色は「食べないで」、これが植物と鳥とのサインである。
植物は食べられることで、花粉や種子を運び、分布を広げている。植物はキリストが地上に現れるはるか以前に、「与えよ、さらば与えられん」の境地に達していたと言える。雑誌や新聞記事によると、1990年から2020年に、世界で昆虫の8割から9割がいなくなったとも言われている。受粉に重要な役割を果たしている昆虫類の激減は人類の食糧危機につながるのではと危惧されている。(7期生 関根重明)
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