<中世都市 ピエンツァ(イタリア)>

“これまでを振返る”投稿も3回目になり、やっと現在に辿り着きました。RSSC終了後「もう少し学生証を持ちたい…」と思って明治大学の大学院に進みました。シニアの私には、成績や就職の心配がなく、適度に刺激的な大学院は良いサードプレースになりました。2024年度も科目聴講生として政治・経済・思想などの講座に参加する予定です。

私に限らずシニアで大学院に入った方の多くが、学位取得後も講座に参加し続けています。それはなぜでしょうか? 間違いなくその理由のひとつは、分からないこと・知りたいことがどんどん見つかるからです。そして、その“分からないさ”は、自分で調べ、納得しないと解決しません。自分の関心事を先生方や他の院生に聞いてもらう楽しみもあります。

いま、私の“分からないさ”のひとつが、未来を中世のように表現する理由です。ヘルマン・ヘッセの未来小説『ガラス玉演技』を読み、この事に興味を持ちました。その後、『風の谷のナウシカ』、『ファイナルファンタジー』、『スターウォーズ』などのキービジュアルに中世的イメージが多用されているのに気づきました。

政治学領域の講座で教授が「『2001年 宇宙の旅』の年から既に20年以上も過ぎている。あのような巨大工業進歩型の未来像はなぜ想定されなくなったのだろうか」と問題提起されたのも、考え始めるきっかけになりました。
※これについては、後日調べた資料に「巨大宇宙ステーションを作るほどのレアメタルは地球にはない」との記述があり、概ね納得しました。
※左出所:https://www.amazon.co.jp/2001年宇宙の旅

…、それ以外にも下図を見るだけで様々な問いが浮かんできます。例えば勇者(ヒーロー・ヒロイン)が剣や槍(=武力)を持っています。どういうことなのでしょうか。近代国家では武力は国家が独占します(警察・軍隊など)。勇者が市民とすれば、国家統治が衰退し、帰属集団毎の強い自治権をもつ都市に武力が移管されていることが想定されます。

更に、これらの作品では王族や剣士など社会機能の世襲化が進んでいます。福祉国家から市場国家に向かう政治経済動向や民主主義自体の改革の遅れから、同じ考えを持つ人々が集団離脱して自治都市国家を形成するかのようです。『沈黙の艦隊』で原子力潜水艦「やまと」が安全保障代行国家として独立国宣言するのも同じ背景だと思います。

この自治権獲得の運動に貢献した一族は王族・貴族・剣士などとなり、世襲的に行政を委ねられたのではないかと推測します。一方、司法は自治の権威を示す独自性を持ち、立法は上院(貴族院)・下院制(市民院)の二院制かもしれません。

武器が、銃ではなく剣や槍であるのも気に掛かります。放送メディアが統治側でコントロールされているリアル世界も、フェイクニュースが飛び交うサイバー空間も信用できない!。なので、剣や槍で相手と肉体を晒して対峙する決闘が“本当の他者”を知る最終手段として残されるかのようです。

また、女性剣士が繰り返し描かれていることにも注目しなければなりません。未来の戦いの目的は領土や資源などではなく、“生命と生殖を害する何ものか”が想定されているのか、あるいは様々な課題に対するレジスタンスとして女性の武装が定着したのかも…云々

と、今年1月に社会学領域のある講義(右:発表で使用したPPTの一部)で話したら「”中世的な未来”に共感します。そう感じている人も多いのでは…」、「なぜ未来作品に女性戦士が多いのかは先行研究があったと思います」、「未来社会における剣の意味をもっと深堀して欲しい」などのコメントを貰いました。こんなことが楽しいので、75才位までは学校通いを続けたいと考えています。(7期生 杉村)

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