今年の夏の暑さといったら。
「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉を支えに、祈るような気持ちで秋の訪れを待ちわびた。10月に入って、ようやく空の高さや雲の形に秋の気配が漂い始め、秋の実りを知らせる便りが届くようになった。落花生・新米・栗。秋は美味しいもので溢れている。この時期、私は秋の手仕事に専念する。

手仕事1〈栗の渋皮煮〉
10月8日、まずは高麗まで利平栗を買いに行く。今年は巾着田の彼岸花も栗の生育も遅れ、花の見頃も栗の収穫も2週間ほどずれ込んだが、大きくてツヤツヤした栗を手に入れることができた。帰宅後すぐに仕事にかかる。

第一段階は鬼皮剥き。一昼夜、水につけおき、柔らかくなった鬼皮を丁寧に剥く。これがひと仕事なのだ。渋皮を傷つけないように細心の注意を払う。傷が付いたら最後、栗は中から崩れてしまう。毎年挑戦しているが、結構な確率で傷をつけてしまう。その時は潔く諦めて、渋皮をきれいに剥き、栗おこわにする。1kgの鬼皮をむくと包丁を握った手に赤い豆ができている。

第二段階は灰汁抜き。重曹を入れた湯で5分ほど煮ては水にさらし、水の中で渋皮を傷つけないようにぼそぼそとした筋を取る。これを3回繰り返し、最後に重曹抜きの熱湯で湯がく。

最後は栗がかぶる位の水に、分量の半分のグラニュー糖を入れ沸騰させてから弱火で20分煮る。さらに残りの砂糖を全部入れ30分煮る。竹串がすっと通ったら火を止める。しばらくそのままにして粗熱をとる。半分は瓶に詰め、残りの半分は汁ごと冷凍にし、お正月のお節料理に添える。時間と手間がかかるが、年に一度の栗仕事は秋を感じる一大イベントなのだ。

手仕事2〈リンゴジャム〉
10月中旬、寒河江産の紅玉が届いた。紅玉は地味な形状ながら、酸味と甘みが強く、かぶりつくと他のリンゴでは味わうことできない爽快感が口いっぱいに広がる。しかし、焼きリンゴ、ジャム、コンポートのように熱と砂糖を加えることで、紅玉は本領を発揮する。ジャムやコンポートにして保存すれば、長く楽しむことができる。

5kgの半分はジャムにする。1個を4等分し、厚めのいちょう切りにして、砂糖(私の場合通常のレシピの半量)にレモンを加えて煮る。無農薬なので皮も一緒に煮るとピンク色のジャムの出来上がり。熱湯消毒した瓶に詰めて蓋をして保存する。1.5kgはコンポートにして、パイにしたり肉と一緒に調理したりして食す。紅玉は意外と鶏肉や豚肉と相性が良いのだ。

残り1kgは生食用として新聞紙にくるみポリ袋に入れて冷蔵庫へ。毎朝2分の1個を皮ごと食べる。朝のリンゴは病気を遠ざけるとか。

手仕事3〈落花生の塩茹で〉
ご多分に漏れず、落花生の生育も遅れ、今年は半月遅れのお目見えだった。近隣の農家で「おおまさり」という大粒の落花生を買う。塩を入れた湯で殻つきのまま約20分間茹でる。圧力鍋なら5,6分間といったところか。塩茹では落花生本来の美味しさを味わうことができる。ビールとの相性も抜群で、ローストしたピーナッツとは一味も二味も違う。一度食せば病みつきになること間違いなし。

一通りの手仕事を終え、10月下旬に福島を訪ねた。
かつての同僚が福島に移住して5年。桜の季節にと誘われていたのだが、都合がつかず5年の歳月が経ってしまった。友人の夫君の運転で裏磐梯・五色沼、喜多方、会津若松を巡った。標高1600mの吾妻スカイラインでは色とりどりの紅葉に見とれ、点在する鄙びた温泉で、源泉かけ流しの湯に浸かった。まさに秋の手仕事を終えた私へのご褒美。最終日、庭の渋柿をもぎ、一個ずつヘタに焼酎をつける。ここでも秋の手仕事。 1週間後、渋が抜けて甘くなった柿が届いた。(7期生 齊藤) 

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