授業承継の喜びと感謝のエピソード二題
坪野谷雅之
(その一)私は77歳でRSSCの定年退職を迎えたのを機に、20年3月に授業とゼミから離れました。この間『暮らしに役立つ経済と金融』の講義を担当しましたが、少なからず難解であるという印象から、作家井上ひさしさんの”難しいことを易しく、易しいことを深くそして面白く!“の言葉を肝に銘じて、独自の研究に基づき国内外の身近な事例を取り上げ、現象を見て→実体を捉え→本質に迫るという手法で、時には脱線もして、双方向コミュニケーションを図りながら進めてきました。現在この講義のエッセンスは、日本銀行ご出身の鉢村健先生の『金融論』に承継されて、より大所高所からの論理的なお話をいただき大変喜んでおります。
(その二)21年度からは「公益財団法人トラスト未来フォーラム」(旧住友信託銀行・現三井住友信託銀行の研究機関)からの寄附講座『信託機能を活かした財産管理と運用』がスタートしました。その発端は、私が大学総長補佐の時に07年度の1年間、立教大学のビジネスデザイン研究科(独立研究科)で、私の現役時代の実体験による『信託業務の理論と実務』の講義を行なったことにあります。いよいよ高齢者の財産管理と運用が現実的に喫緊な社会課題となるに先立ち、同フォーラムにご依頼し堂園昇平先生をはじめ、造詣の深い専門家集団による具体的な講義を頂くことは、日本でも学究的な世界での極めて有意義なことであると特筆されます。これは私の40年余に亙る信託マンとしての長年の夢が実現したと、感謝に堪えません。
最後に、“第二の人生いかに生きるか”を命題に、受講生・修了生と共に真摯に学び、楽しく遊び、素晴らしい友を得たことは人生最高の幸せと感じています。