「Kissの会」メンバーは概ね年2回Kissへ投稿をしています。これに年齢と視力・“脳”力などの身体状態を組み合わせると投稿が出来るのは、あと6-7回に留まると思います。そんなこともあり、これまでのことや考えていることを数回続けて書いておこうと考えました。独りよがりな内容になりますがお許しください。
さて、今年1月中旬の日経新聞と朝日新聞にほぼ同内容の「WBC構想が明らかになった2003年の段階で『キャンプ前に開催したらシーズンに影響する。本末転倒』『いまからサッカーW杯のような大会は絶対無理』などの球界重鎮から発言が続くなかにあって、イチローは違っていた。『1回目がなかったら、2回目もない。でも、歴史ってそうやって創られるんでしょ!?』といって積極的に参加した」との記事があり、共感を覚えました。それと同時に昔から好きだった「井戸の水を飲むときは、井戸を掘った人の苦労を忘れるな/飲水思源」の故事成句を改めて大切にしたいと思いました。私がいまも創業者に関心を持つのは、学生時代にこの言葉を知ったからだと考えています。
会社勤めをしている頃にも、その後の支えとなるコトバを幾つも戴きました。印象深いのは、40代中頃、担当役員とある事業計画を経営企画担当専務に事前説明に行った折のことです。「これは君が書いたのか。私は全社を見ているから分かる。しかし、君たちの事業を知らない役員には分からない。佐佐木信綱の歌を参考に修正しなさい」と指示されました。その歌が「ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なるひとひらの雲」。
“ゆく秋の”=担当事業領域の世界的動向、“大和の国の”=我が国市場の動き、“薬師寺の”=当社の国内ポジショニング、“塔の上なる”=今回計画の内容と目標、“ひとひらの雲”=想定されるリスクとそれへの全社理解。誰もが頷く世界的動向から論議を開始して、段階を踏んでしかし急速に視野を絞り込み、今回の提案内容と課題に持って行きなさいという示唆だと理解しました。短歌で人を促すとは洒落ているなぁ…と思い、黙って持ちネタにさせて戴きました。
また、ある会議で「国内市場は成熟しているで…」と言ったら、副社長のひとりから「市場が成熟しているのではない。成熟しているのは君たちの頭だ!」と一喝され、革新を恐れると衰退に陥るんだと不思議と気落ちすることなく納得できました。後日、このことをある先輩に話したら、いま考えると相当ポイントがずれていたと思うのですが、「カレーライス、食べた後やなぁ」と呟いて、「カレーライスをスプーンでいくら綺麗に食べても、カレールーの筋は残るやろ。市場なんか全部きれい食べられん。なんか残ってる!」と説明されました。面白い、何かの際には使わせて戴きます!と自分の話材に貰いました。ずいぶん粗野でべっとりとしたコトバですが、先が見えないときや自信を無くしたときに「多分カレーライスを食べた後みたいにまだ何か残っている…」と思えば気持ちが楽になりました。会社勤め時代の“こころの常備薬”だったかもしれません。
この先輩からは、新卒以来務めていた会社を辞めて次のステップを進もうかと悩んでいた頃にも、もうひとつ記憶に残るコトバを聞かされました。「人生、自分でつくったものしか残らんよ」。自分にとって最後に残るのは、育てた子や孫そして後継者、腹を括って買った財産(家や株式)、自分なりに心血を注いだモノ・ワザ・仕組み。年を重ねるにつれて、このコトバに頷く機会が増えてきました。
字数制限の関係もあって大切なコトバをもうひとつ書くことができませんでした。別の機会に触れてみたいと思います。(7期生 杉村)
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