昼下がりの公園の横に幼稚園の送迎バスが停車する。ドアから降りてきた下の孫(まもなく5歳)は眠そうな目をして、いつもの元気はどこへやら。彼は3月17日生まれというハンデキャップと日々戦っているらしく、少々お疲れなのかもしれない。今日はジィジがお出迎えだ。こうして私の「見守りサービス」がスタートしたのである。

家に戻って手を洗い、着替えを済ますとどうやらスイッチが入ったようだ。兄(小1)が戻るまではジィジとマンツーマン。次から次へとお気に入りのおもちゃを引っ張り出し、遊び方を説明してくれる。よく喋るようになったものだ。やがて兄が帰宅。弟がジィジを独占できたのはここまで。お菓子を食べようとする弟に「ジィジにも一つあげるんだよ」とのご指導。弟は素直に従い、主導権は兄に移ったのだ。以前はじゃれ合っていたかと思うとすぐケンカとなり、弟の大きな泣き声が部屋中に響いたものだが、少しだけお互いの間合いの取り方を覚えたようだ。

兄が最近手に入れた図鑑「古代文明のふしぎ」を持ってくると、弟もお好みの図鑑「魚」を抱えてやってきた。共通する特徴は「動く図鑑」とのことで、長時間のDVDつき。しかし、「魚」はともかく「古代文明」はいささか難解なのではと思ったが、これがなかなか優れモノなのである。ドローンを活用した空撮やCGなどが圧倒的な迫力でスクリーンに映し出され、そこにはこれまでの調査・研究の成果が織り込まれ、平易な言葉でわかりやすい解説がつく。それを見ながら図鑑の文言を確認していくと、私もすっかり引っ張り込まれていたのである。そして“鉄道オタク”一直線と思われた7歳の少年に「歴史はちょっとおもしろいかも?」と言わせたのである。まぁ、どちらにしても私の趣味嗜好の範囲内だし、これはしばらく楽しめそうだ。

さいたま市では「祖父母手帳」なるものが用意され「孫育て講座」も開かれているが、それらの情報では「子育てが一番しんどいのは1歳後半から3歳前半」と言われている。つまり、我が家はすでにその時期を通り過ぎ、次のステージでのポイントは「一人の人間として向き合い、行動の意味を理解してあげて」とのことだった。

そこで、自らの子育て経験を振り返ってみると、なんともお恥ずかしい限りである。わが息子が小学校に入学した頃の記憶をたどってみても、さっぱり思い出せない。一度だけ父親参観に行ったはずだが、あれは1年生の時だったのだろうか。当時は休日出勤も多く、当たり前のように女房殿のワンオペ育児。世の中はバブルの余韻が残り、まだWindows95の姿もなかった頃である。

ところが今では小学校で、一人1台のタブレット端末が配布される時代である。彼らが成長して社会に出るときに、どんな世界が広がっているのか皆目見当もつかない。地球環境問題に地政学的リスク、加えてデジタル社会への適応力の差が、新たな格差や弊害を生む予感がしないでもない。国会では「次元の異なる少子化対策」の論戦が繰り広げられている。子育ではほとんど機能しなかった私にも、再度チャレンジする機会が与えられたようだ。これは素直に喜ぶべきことなのだろう。

「ピンポーン」とチャイムが鳴ると、弟の表情が輝いた。ママが帰ってきたのだ。ジィジはそろそろ撤収の準備を始めよう。今日は間違いなく元気をもらった。君たちとは適切な距離感を保ち、過剰にスクリーンに頼ることなく、リアルな体験を共有しよう。祖父母離れも近いと聞く。いずれこちらが見守られる側に回るのかもしれないが、まだまだ踏ん張るつもりである。(7期生 石巻)

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