白内障は年をとれば避けられない国民病であり、40歳代で発症する人もいて、80歳以上になると詳細な検査をすれば、ほぼ100%見つかるといわれている。カメラのレンズの役割をしている水晶体が、老化によって徐々に濁るのが白内障である。その結果、外からの光が濁りにより入りにくくなり、物がハッキリとしないで、かすんで見えるようになってしまう。

夫は5年前にウイルス性結膜炎に罹ってから、眼科に定期的に通院するようになっていた。症状が重かったこともあり角膜に強い炎症を起こしてしまい、後遺症として視力の低下があった。さらに加齢による白内障も進行していることが指摘されるようになった。点眼薬による治療と経過観察のために定期的に眼科を受診していた。医師からは「白内障は自分で不便を感じたときが手術をするタイミングです」と説明があった。昨年からは視界が全体的にかすみ不便を感じ、手術の時期を考えるようになった。そこで、本やネットからの情報と同時に、おばさん・おじさん達のネットワークを通して情報収集をした。

その結果、白内障手術を経験している人が多いことに正直驚いてしまったが、「よく見えるようになった」の言葉を頼りに手術をする日程を調整した。気候の安定する10月に4泊5日の入院・手術をすることにした。日帰り手術や1泊入院手術もあるが、嫌なことはまとめて済ませるべきだと思い4泊5日の入院・手術を決めた。手術を経験した人からは「たいしたことは無い、30分くらいで痛くもないし、すぐに終わるよ!」と、慰められ、強がりなのか本当に簡単なのかはよくわからないが、術後の快適さを教えてくれた。実際に夫が手術をしてみると大方その通りだったが、1点だけ足りなかったものがあった。それは手術中の「目を動かさないようするのはつらい」ということである。それ以外は情報通りだった。

入院中に「よく見えるようになった。今までが嘘のよう!」と連絡があり、心配も吹き飛んでいった。夫は手術前のモヤモヤした気持ちがスッキリし、スマホの画面もよく見えることから、病院での食事の写真も送ってきてくれた。大学卒業後の就職先として、私は病院や保健所での栄養業務をすることも考えたことがあって、病院食に興味があり、送られてくる写真は楽しみだった。コロナ禍で面会ができないので、食事の写真を見ているだけで安心することができた。

私は30代、50代で大きな手術による入院をしている。特に30代の時にはICUに入ったので、一晩夫に病院に泊まってもらっている。仕事帰りに毎日病院に来てもらっていながら、わがままを言っていた記憶だけがある。今回の夫の入院で何か恩返しができればと思っていたが、面会禁止の5日間は何もできないままで過ぎ去ってしまった。

退院後、しばらくしてから洗髪や洗顔そして髭剃りも許可され、心配していた炎症も起きていないようで、1日4回の点眼リズムにも慣れてきた。視力も安定したので、新しい眼鏡を作ることができ、車の運転も再開することになった。夫も私も今までの日常生活の有り難さを感じながら、手術に対する不安のモヤモヤも、見づらいモヤモヤもスッキリしたと喜んでいた。

ふと、よく見えるようになった夫の目には私の顔はどう見えているのかが心配になってきた。マスク生活を言い訳にして、緩みすぎていた生活に甘えている自分の顔をしっかりと見たら、皺もシミも増えている。「遅すぎる、手遅れだ!」夫はモヤモヤからさようならしたが、私の心はモヤモヤしてきた。私もモヤモヤからさようならをするために、諦めずに顔の手入れを始める決心をした。絶対スッキリとした健康的な顔で、新しい年を迎えることができるようにしよう!
(7期生 金子)

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