「Kissの会」投稿では、旅行記が一大ジャンルになっています。その旅行先の多くは“東北・北海道”と“京都及びその周辺”です。社会人になってから上京した私は「首都圏の人は東北と京都が好きだなぁ」、「東北・京都は交通の便が良いから? それとも単に首都圏住民の嗜好性?」、「関西以西には行かないの?」などと関心を寄せていました。
そんな折、区立図書館に「旅行年報2020」(日本交通公社)があったので、国内旅行がどうなっているか調べてみることにしました。その概括と私見を下記により報告いたします。
注)コロナ以前の2019年1-12月を対象としています。また、南関東(埼玉・千葉・東京・神奈川)が一つの集計単位となっており、この南関東を首都圏と表記し、旅行には日帰り旅行を含みます。
Ⅰ.首都圏在住者の旅行先(サンプル数構成比より行先回答構成比が高い都道府県)
1位…神奈川、2位…山梨、3位…千葉県、4位…埼玉県、5位…栃木県、6位…静岡県、7位…群馬県
【私見】親元への里帰りも含めて首都圏に近いエリアが主となりますが、首都圏在住者の旅行先といえばまず「温泉地」であることが推測できます。千葉については旅行年報の別資料からTDLが旅行資源として大きいことを示しています。埼玉は文化的名所と自然の豊かさが旅行誘因になっています。しかし、関東に不案内の私には、具体的にどこなのかが良くわかりません。これに対し近畿在住者ではサンプル数構成比に対し行先回答構成比が突出して高いのは和歌山、ついで兵庫、滋賀となり、温泉を含む自然の豊かさが中心のようです。また、北海道の方は道内、九州の方は九州内の旅行が主となっています。
Ⅱ.京都旅行者の居住地域別構成比
1位…首都圏(29.2%)、2位…近畿(28.6%)、3位…東海(16.4%)
【私見】京都在住者は京都観光をしないので判断は難しいですが、首都圏在住者が京都観光の主役であることに間違いはありません。一方、同じ古都である奈良は近畿在住者(34.5%)が1位で、首都圏在住者が2位(19.8%)、東海在住者が3位(19.0%)となっています。「京・阪・神」住民の複雑な京都イメージと近鉄による東海地域から奈良県へのアクセスの良さが現れているように思います。
Ⅲ.東北・北海道旅行者の居住地域別構成比
【私見】首都圏在住者が旅行者に占める構成比率の高いのは、Ⅰで述べた首都圏近郊7県に次いで沖縄、新潟、富山となっています。そのあとが京都・大阪、東北各県と北海道が続きます。沖縄は年報の他資料から旅行者年齢が若いことが伺えます(シニア層は相対的に少ない)。新潟と富山は新幹線があり交通の便は良いのですが絶対数が少ないか或いは温泉地と同様に旅行記を書くには“素材不足”なのかもしれません。一方、東北・北海道は交通手段ひとつを取っても新幹線とローカル線、高速道路・ドライブウェーと一般道、更にフェリーなどと多様で、旅行記を書くのに相応しく、Kissへの投稿回数が旅行回数に比べて多いのではないかと考えます。
Ⅳ.まとめ
大変乱暴なまとめですが、首都圏シニア層の旅行の基本形は「晩秋から早春までは関東近郊の温泉巡り」、「春と秋は京都を中心とする歴史探訪」、「初夏から初秋は北国旅行(東北・北海道・信越・北陸など積雪地帯)」ではあろうと考えます。如何でしょうか。
Ⅴ.付記/気づき
旅行年報データでは、千葉TDLや大阪USJなどの大規模レジャー施設が予想以上に大きなパワーを持っていました。国内でIR(カジノを含む総合型リゾート)構想が実現した場合、観光産業の地域バランスは確実に変わるでしょう。観光立国日本を目指すうえで、観光産業が引き起こすマイナス要素も含め、その在り方について真剣に検討すべきテーマだと気づきました。
(7期 杉村)
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