バルコニーの景色
RSSC教員 松山伸一
私の住まいには陽のあたる二面のバルコニーがある。そこで様々な植物を育ててきた。ブルーベリーは果実の収穫と秋の紅葉がとても気に入って、土にもこだわり、多くの品種を育ててみたが、夏のバルコニーの高温に耐えられずすべて2、3年で枯れてしまった。また、お隣さんから「お宅のアリがうちのリビングに上がり込んで困っている。」と苦情が来たことがあり、アリの飼育もそそのかしもした覚えはなかったが、アリと相利共生関係にあるアブラムシ(アリマキ)がつきやすい植物をすべて処分した。その結果、今、バルコニーは、夏の過酷な環境に適応でき、虫のつかないオリーブで占められている。5月には白くてかわいい花をたくさん咲かせるのだが、階下のよそ様のバルコニーに雪が積もったかのように大量の花びらを散らすので、この時期は横倒しに寝かせている。夏は葉の裏が太陽の光を反射して銀色に輝き、秋には鈴なりの実をつける。熟したオリーブの実から搾油することもあるが、もっぱら小鳥たちの冬の食料として役立っている。スズメの家族やメジロのカップルは仲良くついばみ、ヒヨドリは甲高い声を上げて豪快に丸呑みする。
オリーブの木々は年中、小鳥たちの格好の休憩所になっており、風にそよぐ小枝にとまってのんびりと羽繕いをしたり、戯れたりしている。その鳥たちがおもしろい種を運んでくることがある。ある年はいつの間にか大根が鎮座しており、収穫せずに放置していたら、きれいな白い花が咲き、のちにほんのり紫色に染まった。昨年はコキア(ほうき草)が芽生え、夏には緑鮮やかなふわふわの球体に育ち、秋には真っ赤に紅葉した。
四季折々、変化しているようでもあり、毎日が同じようにも思えるわが家のバルコニー。コロナ禍の喧騒とは無縁のこのささやかな景色が楽しい。
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