更に自粛を求められる日々が続いていますが、感染防止に努めながら健康的な生活を維持できるように歩くことを心がけています。
今年最初は神楽坂、ご近所と言うには少し離れていますが歩いて20分ほどの散歩道は、新しい日常の中で通いなれたコースになりつつあります。音羽通りから早稲田通りに入り、神楽坂を坂の上から下ります。
神楽坂通りには車の通行規制があります。午前中は坂上→下の一方通行、昼1時間の通行止め、午後は逆転して坂下→上への一方通行となります。かつて田中角栄元総理が永田町に通う際、朝は目白邸からこの坂を下り、帰りはご贔屓の神楽坂芸者のもとへ坂を上るために、この通行規制は決まったとか。これには諸説ありますが、確かにこの道の規制は、今でもそのようになっています。
神楽坂といえば夕暮れ時から石畳の路地裏をイメージされる方も多いのでは。民家のようなフレンチレストラン、小さな潜り戸を抜けひっそり佇む酒処、狭い間口のイタリアン、重厚な扉の向こうに広がるカウンターバー等が点在し、迷うことを楽しむような隠れ家、江戸の情緒溢れる風情が定番でありました。
そんな神楽坂を何年も楽しんで来ました。でもコロナ下、夕暮れ時の神楽坂は暫しお休み。変わらぬ風情を願って今は午前中の神楽坂を楽しんでいます。この坂の由来は坂の途中にあった穴八幡宮で神楽を奏したから、とか若宮八幡で神楽が聞こえたからとか、いずれも「お神楽」に由来すると言われています。日の高い時刻の神楽坂は、人々の生活が見えます。荷卸のトラック、スーパーマーケットや精肉店、ドラッグストアに、パン屋さん。
今日は、毘沙門天の前にあるお茶屋「楽山」さんでお番茶を買っていく事にしましょう。
「お番茶頂けますか」
「ありがとうございます、さぁ中へどうぞ。」
店主が中へ導き畳敷きのお休み処に小さな紙コップで緑茶を入れてくれました。
こっくりと甘い煎茶。聞けば当店一番のオススメ、上等なお煎茶。
お番茶を買うお客にこんなに美味しいお茶を出してくれる、こんなお商売もあるんだ、と感心して一つ頂くことにしました。
「こちらお使い下さい」
と店主が茶筒をそっと入れてくれました。よく見ると干支の丑、紅白の和柄。 あゝ新年、丑年! 毘沙門天にそっと手を合わせました。
神楽坂ならではのお店も軒を連ねています。勘三郎煎餅でも有名な「毘沙門せんべい」、中華饅頭は「五十番」、日光金谷ホテルのベーカリー、坂下まで下りるとあんみつの「紀の善」、「のレン」には、日本橋榛原の便箋や小さな盆栽、京都菱六の米麹のハンドクリーム等が並んでいます。
歴史ある街並みは、新しい文化をごく自然に受け入れ、変化しながらも人々の日常生活に潤いを与えているように思います。坂道を愛するタモリさんは、著書「新訂版タモリのTOKYO坂道美学入門」の中で坂道鑑賞のポイントとして①勾配の具合②湾曲の仕方③まわりに江戸の風情を醸し出すものがある④名前に由来、由緒がある事を挙げています。どんな時もいつもありのままの自分を受け入れてくれる坂道、神楽坂。私の愛する散歩道です。(7期)吉岡
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