「私は今、この生命の不安な流行病の時節に、何より人事を尽くして天命を待とうと思います。人事を尽くすことが人生の目的でなければなりません」
(出所:与謝野晶子 1920「横浜貿易新報」)

5月上旬、散歩途中にある特別支援学校の小さな掲示板で上の言葉を見つけました。その後に次のような言葉が続きます。

・・・・・・・・・・(以下、要約)・・・・・・・・・・

1918年から1920年(大正7~9年)に日本で約20万人が亡くなったスペイン風邪の折の投稿です。ちょうど新型ウィルス接近をひしひしと感じていた本年4月頃に近い時期のものでしょうか…。この様な危機が迫る中で、与謝野晶子は「個体としての私の滅亡が惜しいからではなく、私の死によって起こる子供の不幸を予想することのために、できるだけ生きていたい」として、「人事を尽くす」こと、例えば、スペイン風邪に対抗するあらゆる予防と抵抗を尽くそうとします。予防接種を実行し、薬を用い、また子供たちのある者には学校を休ませるなど出来るだけの方法を試みます。

今の時代とは違いますが、感染症に対して断固として抵抗し、子供を守ろうとする晶子の子供への愛と責任感に敬意と感動を覚えると共に、私たちは改めて校内・子供たち・教員に新型コロナウィルス感染症対策を徹底することに人事を尽くします。どうぞ宜しくお願い致します。

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今回の新型コロナ感染症が、他地域と比べて大きな禍とならずに終焉するならば、日本に住むわれわれ一人一人が、晶子のこころね(信念)に共感し、行動したときではないかと思いました。同時に、これを書かれた特別支援学校の先生方の子供たちへの慈しみと強い使命感を感じました。掲示板を読んでいる私を見て、後ろを通られた先生が「ありがとうございます」と挨拶されたのも心に残っています。

「人事を尽くして、天命を待とうと思います。人事を尽くすことが人生の目的でなくてはなりません」。この言葉が身に沁みます。人事を尽くすとは、未来への願いを持ち、正しく予想し、手段を考え、出来る限りの行動をすることだと気づきました。

コロナ禍が過ぎても、緊急事態宣言下の体験は長く残ることでしょう。これから迎える“新しい日常”を、出来る限り正しく予想し、手段を考え、そして行動しなければなりません。緊急事態宣言が解除されたいま、改めて与謝野晶子の言葉を反芻しています。
( 7期 :杉村)

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