教会の礼拝堂に設置されている巨大な管楽器「パイプオルガン」(以降:オルガン)。RSSCの入学式や修了式では演奏が始まると背筋がピッと緊張しました。

10年程前にボストンで年越しをしました。ボストンでは毎年市民参加の年越しイベント「First Night」が開催されます。ボストンマラソンのゴール近くにある「Old South Church」ではパイプオルガンの解説と宗教音楽からポピュラー曲までのデモ演奏、更にはお試し演奏もさせてくれました。石造りの教会の建物の床からオルガンの音の振動が足元に伝わり、「教会にある楽器」ではなく建物全体がオルガンと一体となった楽器なのだ、と体感できた貴重な経験でした。

それから数年後、井の頭線・三鷹台にある立教女学院のマーガレット礼拝堂でのオルガン・コンサートに誘われました。礼拝堂に入ると左手に扉が並んでいて「なんだろう?」つぶやいたら、隣の席の見知らぬ中高年の上品な女性(おそらく卒業生)が「扉の先に部屋があるんです。高校生時代のユーミン(新井由実、後に、松任谷由実)はあの部屋に籠って作品創りをしていたそうです」と説明してくださいました。やがて、J.S.バッハの「幻想曲とフーガ ハ短調」のオルガン演奏が厳かに始まりましたが、私の耳にはユーミンの『海を見ていた午後』が鳴り、東京から車で出かけた横浜・根岸競馬場近くの山手のレストラン「ドルフィン」と「ソーダ水の中に貨物船が通る・・・・」という歌詞の映像も一緒になり暫し礼拝堂にふさわしくない思いに浸っていました。ユーミンはデビュー当時から大人の雰囲気を持つお洒落な存在で、この感性はどこで身に着けたのだろうか、ずっと謎でした。十代後半の多感な時期に立教女学院、マーガレット礼拝堂、パイプオルガン、それに加えてイタリアンレストラン「キャンティ」と「お茶の水美術学院」での背伸び体験がその感性を生み育んだ、礼拝堂でオルガン演奏を聴きながら「なるほど」と納得しました。

ユーミンの代表曲の一つに「泣きながら、ちぎった写真を・・・・」で歌い出す『あの日に帰りたい』は、ああ、あの曲ね、とご存知かと思います。もう1曲、新井由実・作詞で「街灯り指でたどるの・・・・」と歌い出す、村井邦彦・作曲、ハイ・ファイ・セット(山本潤子)『スカイレストラン』も聴いたことがあると思います。この2曲、『あの日に帰りたい』を『スカイレストラン』の歌詞で歌うと全く違和感なくピタリとはまります。『あの日に帰りたい』はTBSのテレビ・ドラマ主題歌として新井由実が作詞作曲したのですが、歌詞がドラマの内容にそぐわない、と放送直前に急遽新たに作り直した、いわば替え歌なのです。後日、村井邦彦がこの没になった最初の歌詞が捨てがたいと、この歌詞に作曲してハイ・ファイ・セット(山本潤子)の『スカイレストラン』が生まれこちらも大ヒット、どちらの歌詞でも相互に歌える2曲なのです。替え歌と言えば『コーヒー・ルンバ』に薬の名前だけを並べてアントニオ古賀が歌う『薬ルンバ』やベートーベン第九の替え歌など、優れモノもあります。

さて、これらのユーミンの楽曲は私が4年間在籍して今年3月に卒業した東邦音楽短大でのポップスの作曲とコードを学ぶ真面目な授業の教材です。ポップス歌手の歌唱を分析して自分で歌う授業などもあり多彩でした。勿論、音楽短大ですから所謂クラシック音楽が授業の中核で、声楽専攻の私は歌曲やオペラのアリアが実技試験の課題です。短大卒業後ですが、大学3年次への編入学が認められ4月から引き続き学割通学を続けます。22歳から46年間の1stステージ(仕事)は昔になりました。ポストRSSCの3rdステージは音大生、新たな世界への学び、進行中です。(7期生:土谷千明)

 <写真出所>
   *ボストン「Old South Church」:
        https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g60745-d279055-Reviews-Old_South_Church-on_Massachusetts.html

     *「立教女学院」ホームページ     :https://www.rikkyojogakuin.ac.jp/
     *カフェ&レストラン「ドルフィン」ホームページ:http://www.gourmet.ne.jp/dolphin/

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