年末、新宿紀伊国屋書店を覗いた。本の帯に「カッコいいを考えることは、いかに生きるべきかを考えることだ」「それは人間にポディティブな活動を促す大きな力」とある。さらに「カッコいいという価値観と無関係に生きている人間は、今日一人もいないのでは?」とある。妙に納得し、確かに行動や言動の基準にカッコいいがあると思った。*本の著者は平野啓一郎
年号が改まった昨年もいろいろあった。連日メディアを賑わした「桜を見る会」の公文書廃棄や支持者招待、説明回避はモヤモヤ感が残る。統合型リゾート施設事業の賄賂問題や、原発マネー還流疑惑も困ったものだ。弱者いじめも後を絶たず、京都アニメーション放火事件も残念だった。
一方、ノーベル化学賞受賞者吉野彰氏のユーモア溢れるインタビューは、何度みても素敵だった。信念持ってアフガニスタンを緑化した中村哲医師にも頭が下がる。ワールドカップラグビー日本代表の、活躍と清々しさは日本中を感動させた。スーパーボランティアと呼ばれる尾畑春夫氏の、ジョーク交じりの言葉にはしびれた。そして新春の箱根駅伝の、青山学院大学の復活優勝にも感動した。カッコよかった。
私事だが反省することが多々ある。その一つに仙台文化横丁の老舗居酒屋でのことがある。美人女将が接待するカウンターだけの店だが、そこでは豊かな時間が流れる。客は暗黙の流儀で静かに楽しむ。ある日一見客らしきグループが入店、徐々に会話のトーンが上がる。我慢の限界を超え「うるさいよ!この店は君らのように騒がしく飲む店じゃない」と叫んでしまった。店内の雰囲気を一瞬にして壊してしまった。女将に「私が注意すべきでした」と言われたが、馬鹿な事を言ったなと恥ずかしくなったがあとの祭り。小さな正義感が瞬間湯沸かしのように頭をもたげたのだ。女将通じて注意するなり、黙ってその場を離れるのが礼儀だった。カッコ悪かった。
カッコいいの語源は「格好」音楽関係者が使い始めたようだが、1960年代以降爆発的に流行し、現在でも使われる。一時の正義感からではなく、自然体で普遍的なカッコいい行動、言動が望まれる。ジャズやロック奏者のようなカッコよさは真似できないが、実質的なカッコよさは見習うことができる。幸いカッコいいを間近に感じる機会に恵まれているので、具体的カッコいいは見つけやすい。
今年は小さくても新たなカッコいいを追い、行動や言動に反省の少ない年にしたい。そして東京オリンピック・パラリンピックの年、カッコいい出来事が数多く報道される、そんな年になることを願う新春だった。(7期生 榎本)
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