カラスがごみ袋をあさってごみが散らかっていることを多々見かけるが、でも最近東京ではカラスが少なくなったような気がする。2001年ころは都内でのカラスの生息数は36,000羽くらいだったらしいが、2004年ころに20,000羽を下回り、ここ2-3年は10,000羽を割るまで減ってきているようだ。(どうやって数えるのかわからないが)。だがこれは自然減でなく、カラス被害の苦情に答え、都や市区などが人為的な捕獲や巣の撤去、ごみ対策(兵糧攻め)などが奏効したということ。
ところで野生生物にとって、緑豊かな森林地帯と、コンクリートに囲まれた都市空間と、どちらが棲みよい環境か、と問われれば、当然前者と思うだろう。でもカラスをはじめ、ツバメやスズメ、また鳥に限らずタヌキやアライグマ、またハクビシンなどという動物も、都会で生きその数を増やしているそうだ。
私は、数年前、全カリで松原始先生(カラス研究の第一人者)の「都市と野鳥」という授業を受け、とても勉強になった。都市は人間が自分たちにとって住みやすいように作り上げたもので、人間以外の動物の都合は全く考えてはいない。当然、動物にとって都市空間は棲みにくいはずである。しかも人間はかなり大型で賢い動物であるので彼らの敵となるには十分であるし、また捕食以外の目的で攻撃してくるという意味でもすべての動物にとって最大の天敵とも言える。だが、人間は彼らを取って食べる習慣がない。そして本来の天敵である大型動物や猛禽類は都会にはあまりいない。しかも都会は、営巣、採餌という面でなんと恵まれた環境なのだろうと驚かされる。
当然生態系の中で生きているので動物のなかでも、鳥類だけがとりわけ繁栄しているわけではないが、鳥類は人間=都市との関わり合いが大きな生物であろう。とくに都市と密接に関係が深いのがカラス・スズメ・ツバメである。日本の都市に棲む種だけに限定しても、彼らは人間がいないと都市空間では生息できないようだ。カラスは通常、樹上に営巣するが、人口建造物の上にも作る。スズメは軒先など人家に拠るところに営巣し、しかも人里にしかおらず、廃村などで人間がいなくなるとスズメもいなくなるという。ツバメは100%人工物にしか営巣しない。
都市に棲むカラスの餌は、樹上で果実や昆虫、小鳥のヒナなども食べるが、動物の死体があれば必ず食べに来る。でも実は都会のカラスの餌は人間の出す生ゴミがその主であるようだ。云うなればカラスは東京都民が飼っている=給餌している、ということだ。
鳥類の塒(ねぐら)は多くは樹木だ。都市には建造物とともにかなり多くの樹木がある。大小の公園、道路に等間隔に植栽されている樹木、駅前などの街路樹、新宿御苑や明治神宮などの森林のような地帯など、都市のいたるところにねぐらに適した樹木が多い。これは都市には木がないという俗説とは全く正反対の事実である。つまり都市は棲みにくいどころか彼らにとってはかなり良好な環境といえる。それが生態系によいことかどうかはわからないが、今を生きる彼らにとっては取り合えず棲みよい環境だと思われる。
都市では野鳥といわれる多くの鳥類が多様に生息している。鳥たちもしたたかに生き、人間も迷惑を受けながらもそこそこ喜んだりもしている。だが私達は、鳥たち、または人間以外の生物たちと人間がどのように共存していかれるか、また、これが生態系、生命の多様性にどう影響するかを常に考えることが必要ではないだろうか。
(7期生 佐野英二)
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