池袋駅から西武線にゆられること1時間、そこには緑豊かな奥武蔵の山が連なる。名も知られぬ地味な山が多いが、沿線の小学生には馴染み深い遠足コースが数多く存在する。現役時代に何十回も子供たちと歩いた奥武蔵の山を、今はかつての同僚たちと月1回のペースで歩いている。

メンバーは10人。82歳を筆頭に、古希前後の山好き女子が集まる。若い頃は、3000m級の山を歩いた強者ぞろいだ。そう、私たちは元祖山ガール、現在シニア山ガール。

飯能駅から西武秩父線に乗り換え、秩父までの小さな駅から山歩きは始まる。高麗駅からは何といっても日和田山(308m)。整備された歩きやすいコースだが、岩稜登りの難所男坂があり、登山家の田部井淳子さんもよく歩いたという。金刀比羅神社まで登ると眼下に胸がすくような景色が広がる。高麗川の曲流が作りだした巾着田と箱庭のような多峰主(とうのす)の丘が見える。

武蔵横手駅からは五常の滝、北向地蔵(406m)を廻って物見山、日和田山へ向かおう。沢に沿った林間コースは夏でも涼しい。若い鶯の声を聴きながら歩けば気分爽快。吾野駅からはハイカーの銀座通りと言われる顔振り峠(538m)を目指す。春には様々な花が咲き乱れ、峠からの景観に人気が集まる。幕末に飯能で官軍に敗れ、黒山で自刃した振武軍参謀の渋沢平九郎がたどり着いたという峠の茶屋で一服してユガテを目指す。ユガテ(湯ケ天)はその昔、天に吹き上げるほどの湯が沸く村であったとか。沢に棲む大蛇を火縄銃で撃った時から湯はピタリと止まったという伝説の里である。2月中旬から万作・福寿草・梅が咲きそろい、さながら桃源郷の趣。

西吾野駅からは樹齢800年の大イチョウで有名な高山不動尊(618m)を目指そう。さらに進むと関八州の見晴らし台(770m)があり、360度のパノラマが広がる。同じく西吾野駅からは子ノ権現(640m)、滝不動を経て吾野に至るコースもある。子ノ権現には足腰の守り神として篤い信仰を集める鉄製巨大わらじが祀られており、訪れるハイカーも多い。

正丸駅からは、正丸峠、小高山(720m)を経て奥武蔵随一の人気を誇る伊豆ケ岳(851m)へ。スリル満点の鎖場を登った山頂からは丹沢連峰、武甲山の山並みを御覧じろ。関東平野の広がりのかなたに新宿の超高層ビル群が霞む。秩父鉄道野上駅からは長瀞アルプスを経て宝登山(497m)に登るコースがある。ここは2月下旬からは蝋梅、梅、マンサクが咲き乱れる。ロープウエイがあるので、誰でも山頂付近の宝登山神社奥宮まで行くことができる。下山して長瀞名物の川下りも楽しめることから海外の観光客も多い。

どのコースも12~15km、5~6時間の日帰りコースだが、温泉につかってゆっくりすることもできる。奥武蔵の山は1000mに満たない低山ばかりだが、トレッキングの楽しさを十分に味わうことが可能だ。何よりも都心から近く、思い立ったらすぐ出かけられるところがいい。

夏には2泊3日の山合宿がある。こちらは2000m前後の本格的な山歩きである。山頂からの景色は登ったものにしか味わうことができない宝物。とはいえ、現役時代から10年以上の年月が経っており、無理は禁物。頂上まで行く者、途中で折り返す者、高山植物の写真を撮る者など自分の体力に合わせて歩き方も楽しみ方も様々である。

夏の山登りのご褒美は温泉だ。秘湯の宿で山の幸をふんだんに使った料理をいただく。いい湯は山登りの疲れをとってくれるし、風呂上がりの一杯はこの上なく美味しい。今年は上高地焼岳(2455m)登山の予定。装備と体調管理を完璧にしてどこまで行けるかトライする。山ガール継続中。(7期生 齊藤喜久枝)

<<Kissの会は、RSSC同窓会ホームページへの投稿サークルです>>
【Kissの会 連絡先】         kiss7th.rssc@gmail.com 
【投稿履歴/Kissの会 webサイト】https://rssc7thkiss.jimdofree.com/

この記事の投稿者

編集チーム