老人版「スタンド・バイ・ミー」顛末

堀 耕治(RSSC本科ゼミ担当教授)

 川崎市に住む中学以来の友人と飲んでいて、共通の風景の記憶が話題にのぼりました。それは、われわれの中学校から遥か北、緑濃い山を背景としてそびえ立つ白亜の建造物の姿です。アルコールの勢いもあったのでしょう。母校付近を出発点として、その建物まで歩いてみようということになりました。母校の所在地は大阪府下。つまり酔狂にも、わざわざ大阪まで出向いて「原風景」の正体を徒歩で確かめに行こうというのです。映画「スタンド・バイ・ミー」がわれわれの頭にモチーフとしてあったのかもしれません。老人(=元少年)たちの小冒険です。

 その建物は京都大学阿武山地震観測所という名称で、300mにも満たない低山の頂上付近にあります。今では観測所としての役割を終え、歴史的価値のある地震計などを展示する施設となっているようです。調べてみて意外だったのは、遥か遠くに思えた観測所まで直線距離でたったの5km、徒歩経路でも7km程度しかなかったことです。ちょっとがっかりしました。ですが、これなら「楽勝」だとも思いました。

 さて当日。意気揚々と歩き始めたわれわれ。ふだんからわずかながら運動習慣のある私にはたしかに楽勝でした。しかし友人は麓まで来て音を上げてしまいました。私一人で登っても面白くはない。結局われわれの「スタンド・バイ・ミー」は、タクシーで目的地にたどりつくという甚だ残念な結果に終わりました。

 ただ、事前に参加予約をしてあったのですが、一般向けの講義と所内見学会がその日はあり、これはなかなかに興味深い内容でした。長くなるので詳細は省きます。みなさんも、もし万一この近辺に用向きでもあれば、都合をつけて参加してみてもよいかもしれません。「阿武山観測所」でネット検索すれば、情報が入手できると思います。

 以上、最近のことを書きました。

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編集チーム 十六期生