『ニル-アドミラリ』
鉢村 健
●明治時代、日本医学界に貢献したべルツは、出産時の苦痛を見せまいとする日本女性に感動し「欧州貴族が創り上げた高貴さに匹敵する」と称賛しました。その背景には喜怒哀楽の感情を表に出さないことが欧州貴族の伝統であるとの自負があります。欲望むき出しの人間の姿は見苦しいと思う価値観が底流にあるのでしょう。べルツは西洋で失われつつあった「ニル・アドミラリ」を日本で再発見しました。
●一方、現代の日本人を見ると、社会環境やIT技術も影響して、承認欲求や権利主張が増加したように思います。そうした中で、隣人や社会全体を思いやる精神が後退してはいないでしょうか。
●江戸時代に発達した「粋」の文化は目立たないことが重視されます。西洋の「ダンディズム」も「粋」に通じるところがあり、共に「抑制の美学」と呼べます。洋の東西を問わず、「品のあること」とは力を誇示したりせずに自らを制御することと言えます。
●人類は21世紀の近代社会になっても貧富の格差は止まらず、大量殺戮やテロが続いています。価値観が対立する混迷の時代には「他者を知り」「汝自身を知る」ことが大切であり、それにより「本質的で普遍的な課題」が導き出されます。セカンドステージ大学における知的活動は単なる「学び直し」ではありません。教員も含めて、多種多様な背景を持つ方々との交流の中で相互理解が深まり、他者の価値観を知り・認める過程が生まれます。対極の価値観を認めることは、教養を高める中で人格陶冶の「寛容(辛抱強さ)」に繋がります。知性の高さとは寛容の高さでもあるのです。
●べルツが称賛した「気品のある日本人」を取り戻す知的活動を目指したい。その場がセカンドステージ大学です。
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