先月末、福島県の喜多方市を訪れる機会がありました。本来の旅の目的は、4月に入学した大学院(21世紀社会デザイン研究科)の修論テーマへのヒントや材料探しでしたが(当市は、近年「太極拳」をとおしてのユニークな「まちづくり」を宣言中)、実際に現地に足を運んでみると、常日頃「情報に疎いなあ」と自覚している者(私自身)にとっては、予期しなかったちょっと嬉しい発見や体験がありました。今回の投稿では、そんな喜多方市での発見や体験、そして地元の人から聞いた話を報告させていただきます。
福島県喜多方市は、福島県西部、会津地方の北部に位置し、人口約4万8千人余の小規模な地方都市ですが、実はこの地のラーメン(喜多方ラーメン)は、札幌ラーメン、博多ラーメンと並ぶ、日本三大ラーメンの一つとのことでした。そういえば確かに名前だけは何度か聞いたことがありましたが、現地に行くまで、まさかこのごく普通のさほど大きくない「まち」のラーメンが、札幌や福岡(博多)といった大都市のラーメンにも負けないほど有名であるとは全く知りませんでした。訪れたのは大変暑い日でしたが、早速、駅近くのラーメン店の一つに飛び込み、最もスタンダードといわれる醤油ラーメンを注文し、食べてみました。確かにおいしい。麺は「平打ち熟成多加水麺」と呼ばれ、東京で食べるラーメンよりも太く、独特の縮れがあり、また柔らかい食感の中にもこしがしっかりしているとの印象を持ちました。味は醤油が基本とのことですが、店によっては塩味、味噌仕立てなど千差万別。具はチャーシューを主とし、ねぎ、メンマ、なると等が一般的とのことでした。一説によると、大正の終わりから昭和の初めごろに、ある中国出身の青年が「支那そば」を打ち、屋台を引いたのが発祥とのことでした。今では、喜多方市内に120軒ほどのラーメン店があり、人口あたりの店舗数は「日本一」との話でした。
また、喜多方市は、遠い昔から、醤油、味噌、清酒の醸造業が盛んで、醸造の為の蔵が多く創られ、使用されていたといいます。まず、最初にそんな蔵を撮る写真家の間で「蔵のまち」としての人気を得、知名度が上がりました。やがてマスコミにも注目され、蔵が建ち並ぶ町並みが「蔵のまち」として取り上げられ、全国に喜多方市の名が知られるようになったといいます。毎年多くの観光客(現在では年間180万人とも)がこの「蔵のまち」を訪れ、そんな観光客の間でこの地のラーメンが有名になっていったとの背景があるようです。
そもそも「きたかた」市の名前の由来は、現在の市一帯の地域が会津の北方に位置していたことから、「古来、北方(きたかた)と称され、江戸時代には、会津藩の領地であった」との地元の人の説明がありました。現在の喜多方市は5つの市町村が合併し誕生した「まち」とのことでした。東京からは、東北新幹線、JR磐越西線を利用して、約3時間半で喜多方駅に着きます。白虎隊、鶴ヶ城で有名な会津若松の少し先の駅です。郡山から喜多方に向かう車窓からは、思った以上に美しく、青々とした水田風景が広がり、稲作が大規模に行なわれている様子も覗え、さすが「米どころ福島」を感じさせるものでした。
現在、喜多方市は、「蔵のまち」、「喜多方ラーメンのまち」に加え、「太極拳のまち」を市議会が宣言しています。太極拳をとおして「健康・福祉・教育・交流」の調和のとれたまちづくりを目指し、行政・地域住民・研究機関が協働し、「太極拳ゆったり体操」の開発・普及をはじめ、様々な事業を行っています。中国出身の青年が始めた「支那そば」と、中国発祥の「太極拳」が、「いま、ここで」ともに地元に根付き、地域振興に貢献しているのは、おそらく偶然ではあっても、何か不思議な縁を感じます。この地で太極拳が盛んになった背景については、いずれ別の機会に報告させていただければと思います。
(7期生北原)
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