「グラウカ」という言葉を聞いて、それが薔薇の名前だとわかる人はかなりガーデニングに詳しい人だと思う。薔薇といえば花弁がたくさん重なった豪華なイメージだが、このグラウカは春と秋は銅葉、夏は銀葉が楽しめるのが特徴で花はひとえ咲き。野趣のある自然な美しさが通をうならせる。(右写真:薔薇グラウカ➡)
ここ安曇野にその名を冠したグループがあり、表向きは(というと人聞きが悪いけれど)花やハーブを道の駅やレストランに出荷している。売り上げは殆ど土など資材の購入に充てるので賃金は雀の涙ほど。それでも出荷に至るまでの日々、彩にあふれた時間が面白くて結成当初5人だったメンバーが80人ほどになり、毎日は参加できない人もそれぞれ都合の良い時にこのグループに集っている。
ある日は種まき、種類によってはさし芽。またある日はポット上げ(発芽用の土に撒いた種が芽を出し根が張ってきたら、グラウカ特製ブレンドオーガニック培養土を入れた直径10センチくらいのビニール製の植木鉢に植え替える作業で、成長に合わせてポットを大きくする)をし、育った苗から出荷する。出荷に当たってまずは花の名を印刷、A4のパウチに24枚ずつ挟んでこれをカットして名札を作る。そこに値段を記入してきれいに拭きあげたポットひとつひとつに立てる。展示用に大きめの名札も用意し、並行して記録を控え漸く準備完了。ひとつの苗が店頭に並ぶまでにはとてつもない手間と暇がかかってるのだ。

①種蒔き ②発芽 ③ポット上げ ④マルシェに出荷
金曜日はハーブとエディブルフラワーを摘んでレストランに出荷する。用意するハーブ、エディブルは時期に応じてそれぞれ10種類を超えているだろう。少しでも美しくお届けしたい気持ちを詰め込んだパッケージが出来上がった時の喜びは、アブラムシ取りに手を焼いたことも、ピンセットを駆使し目が疲れたことも吹き飛ばしてしまう。効率を考えたらそこまでしなくてもと思うのだが、そうはしないところがいかにもグラウカらしい。
そしてどの日も朝な夕なの水やりはもちろんのこと、作業の合間にお茶が用意されている。言うなればおしゃべりしながらのミーティング、時々話が飛んでしまってもどこかで軌道が修正されうまくまとまるのもグラウカの真骨頂ではないだろうか。

新メンバーがいる時は大抵自己紹介があるのだが、古参になってくるとメンバー同士のことは何度も聞いているので、その人がどういうご縁でここに来るようになったかすっかり覚えていて、本人がうっかり言い忘れたりすると隣の人が補足してくれるという仕組みが自然と出来上がってしまった。
構成メンバーの多くはアラセブ世代の話し上手聞き上手でおまけに差し入れ上手でもある。花の香りと笑いに包まれた空間、居心地の悪いわけがない。金銭的な報酬は少なくても来る人が絶えない理由がここにある。私なども全く頼る人もないこの地に平気で暮らせているのもグラウカの人たちのお陰だと心から思う。
そのほかにもマルシェの開催、ビニールハウスの屋根の張替え、園芸のプロを招いての講演会、ガーデンの見学ツアー、地元の小中学校で行われる総合学習支援、町の移住促進課との協働など、思いもよらないことに巻き込まれている。
これまでの活動を思うと枚挙にいとまがないが、中心メンバーも高齢化などにより交代は免れないと思う。しかし人がまた新たな縁を繋ぐだろう、5年の月日のうちにいつしかここが私のサードステージになっていることに間違いはなさそうだ。宿根草が芽を出しているのを見るにつけ、もしかしたらこの小さな緑は私より長く地上に存在するかも!ささやかな発見の日々は続く。 (右写真:マルシェ遠景/安曇野➡)
(7期 森部美由紀)
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