1979~1980年ごろであったと記憶しているが、テレビから流れるある飲料メーカーのCMに、言葉では表現出来ない、ある種の衝撃を受け、目がくぎ付けとなった。というのも、若い頃は、「空手」やブルース・リーに代表される「カンフー映画」に強い関心を持ち、中国武術全般に対しても、力強さとスピードをイメージしていた。
ところが、そのCMには、中国武術の一つである「太極拳」を優雅に舞う2人の女性の映像と、次のようなナレーションが、当時の中国の情景にぴったり合った心地よい音楽とともに流れていた。
北京の空気はやわらかだった。せっかちな僕らもいつの間にかゆっくりと歩いていた。
ゆったりとしたリズム、太極拳を見ても同じだった。中国のことは何も知らないと思った。
4千年の歴史、9億人の人間、夕日の向こうには、ヨーロッパがあった。大陸なんだなあ~。
大きな力はゆっくりと動くんだなあ~。
このCMを見て、「ゆっくり、柔らかく、優雅に動くのに本当に武術なのか? そうであればもっと深く学んでみたい。」等の思いが心に浮かんだ。また、ちょうどこのCMが流れた頃は、1972年の日中国交正常化、1976年の文化大革命終結の数年後で、今と状況が違い、日中友好の広がりを歓迎する雰囲気が、日本中で感じられる時代でもあった。
後で知ったことだが、放映された太極拳映像には、実は2人のバレーダンサーが起用され、太極拳本来の身体の使い方はしていなかったという。しかしながら、ゆっくりとやわらかく優雅に動く映像とその印象は、多くの人々を魅了した。自分はもとより、長年一緒に学んできたカルチャー教室の仲間たちも全く同意見であった。このCMの映像が、多くの日本人にとって、初めて太極拳を知り、太極拳に強い興味を持つ、一つのきっかけになったのはまちがいないと言える。
約40年以上にわたって太極拳を続けられてきたのは、単に健康に良いというだけではなく、ひょっとしたら、最初に衝撃を受けたイメージ通りに、「いつか優雅に円やかにゆったりとした動きができるようになりたい」との願望が、心の奥底に潜んでいたのかもしれない。
そんな太極拳に対する思いを持ちながら、今年も秋の代々木公園での「青空太極拳」や「太極拳全国交流大会」に参加したり、教室での稽古以外でも積極的に活動してきた。また、スポーツジムでの太極拳レッスンにも(流派は異なっていても)、新しい衣装と年齢にふさわしい?髪型(坊主刈り)で参加し、色々と楽しんでいる。今後も無理をせず、できるだけゆったりと(できれば優雅に?)学び続けられたらと考えている。(7期生 北原)
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