先々月に行われた「KISSの会」の編集リモート会議でのこと、メンバーが近況報告として上野の森美術館へ行った事を話されていたので、これは過去の「兵馬俑展」を観る機会を逃した事もあり、日中国交正常化50年記念事業として昨年(2022年)11月22日~2023年2月5日まで上野の森美術館で開催されていた「兵馬俑と古代中国」を鑑賞してきた。

1974年に始皇帝陵から死後永遠に主を守っていた8,000体近くの等身大の兵馬俑群が埋まっていることが発見され、その発掘は当時「20世紀最大の発見」と報道され興味を持った方がいらしたのではないのだろうか。

展示は第Ⅲ章に分かれており「第Ⅰ章 統一前夜の奏(西戎から中華へ)」・「第Ⅱ章 統一王朝の誕生(始皇帝の時代)」・「 第Ⅲ章 漢王朝の繁栄(劉邦から武帝まで)」。
戦服将軍俑・鎧甲軍吏俑跪射武士俑・立射武士俑の8体は第Ⅱ章で展示されていた。中国古代(2200年以上前)、中国をはじめて統一した始皇帝(奏王嬴生<趙政・趙生>)から皇帝に即位した12年間を象徴するものが等身大で作られたのが兵馬俑だという。(展示図鑑参考)

今回展示されていた説明によると1974年から1992年の間に出土され、陶 高さは跪射武士俑(左足をたて、右膝を地につけて弩(いしゆみ)を持って待機する姿)が122㎝、大きい物で196㎝の戦服将軍俑(将軍というのは通称で、高級軍使と高級武官の姿)精悍な顔つきは亡き父にも似ていて思わず暫く見入ってしまった。

それぞれの役目に合わせ鎧や髷の形までも部隊によって異なり、一体一体の指先まで表現されている姿は、見学者の想像力を掻き立てる。兵馬俑群を図鑑で見ていても、何千体という像が発掘された地下で一方向に整然と並んでいる様子は、それぞれのモデルとなる人がいたのではないかと思うほど表情が豊かだ。

1974年に発見されてから、現在でもなお発掘が続けられていることにびっくりするが、そもそも1932年に跪座俑 陶 高さ64㎝(今回の同種展示)が始皇帝陵の墳丘の東南で馬や動物を飼育する役人(実際の人間の7割程度の大きさ)を忠実に摸したものが出土しており、(展示図鑑参考)兵馬俑抗と同じ空間に馬の等身大が収められている事を知ると、奏の人々の馬や動物に対してもの熱い想いを感じる。

兵馬俑の存在に魅かれての鑑賞であったが、鳳鳥銜環青銅薫形器(青銅 高さ35,5㎝ 底径18,3㎝の香を焚くための香炉/左写真)も印象的だった。器の頂部(球体状の器)には大きな目をした鳳鳥がくちばしに輪飾りを銜えている。土台と球体状で出来た上部部分は美しい透かし彫りの文様、良く見ると網目に沢山の煤が付いているようにも見えて、当時のままの香が残っていそうだ。

それは、ほのかに香ってきそうな錯覚に捉われ、展示物を蔽っている透明の囲いがやけに恨めしく思ったのは私だけだろうか。

「そこにある 幾千年の 香り雅に 重なる想い 空に浮きたつ」

(7期生 梅本)

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