3月13日に「朝日新聞ReライフFestival 2022春」(左下画像参照)というオンラインのイベントがあり、自宅でいくつかの講演を視聴した。特に心に残った養老孟司さんについて書いてみたい。

左:https://www.asahi.com/relife/festival/fes/yourou/  右:https://www.bookbang.jp/article/544144

  • 「医者にかかると、その人のことを見ないで検査のデータを見ている。その人の本体はいらない。ノイズなんだ。データに入ってないものは、コンピュータから言うとノイズ。同じ部屋で仕事をしているのにメールを送るのも、あんたの顔を見たくないんだよってこと。」
  • 「子どもがゲームをしていて、10歳ぐらいでもう気づく。」
  • 「都市は、理性的、意識的、言葉。ああすればこうなるとシミュレーションできる。意識に対立するものは、自然。自然は、基本、予測不能なもの。個人で言うと体、社会で言うと、子どもなんだ。子どもは、ノイズ。そして、社会全体の動きと子どもが分離してしまった。」
  • 「良い生き方って何ですか、って小学生が聞く。何で死んじゃいけないんですか、って高校生が聞く。言葉は危険だ。経験してないことがわかった気になってしまう。人生? 一言で言えるだろうが、一言で言われたくない。84年の紆余曲折がある。生き方、個性、自己実現、若い人は言うけれど、おれはお前を隣の学生と間違えないから、個性なんて言うな」。
    このような発言が印象に残っている。

この人の本では、むかし『バカの壁』を読んだことがある。面白かったと思う。でも、こんなに地アタマが良ければ自然の中で遊ぶ時間が取れるのかもしれないが、私はガリガリ勉強しなきゃ受からないと思っていた。『リコウの壁』も人をはじいていると言いたい気がした。養老孟司さんから受ける印象は今もそうで、話に出てくる人の中で私みたいと思ったのは、ノイズと言われた患者さんぐらい。いつも距離を感じる。

とはいえ、話に引き込まれ、あっという間に時間が過ぎて、えっ、あと1分?と驚いた。持ち時間は13:00~14:00のはず。すると、養老さんは「体使って外に出ろ! それが私の結論!」と叫んだ。子どもみたいに必死の声で。そして、講演は定刻に終了した。

後から、走り書きしたメモを見ながら全体を振り返って、私はもう一つの必死の声を思い出した。子どもはノイズという話をした後に、養老さんは「だから、子どもは可愛いんだよ!」と叫んだのだ。面倒くさいでも、やかましいでもなくて。だから、昔から子どもは可愛いものに創られているのだと、と。

そうしたら、始めの方で言っていた「10代、20代、30代の死因のトップは自殺です。非常に生きづらい世の中を作ってしまった」という言葉が響いてきた。それだけが言いたいから、変えたいから、この講演をやったんだ、と伝わってきた。それは、先生の端正が崩れた、言わば「ノイズ」のようなところからだった。
(7期 安孫子)

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