定年退職を迎えた7年前の冬、赴任先だった福島から帰る日だった。東北新幹線東京駅で中央線に乗り変え、新宿駅で京王橋本線に乗り換えた直後スマホが震えた。自宅到着予定を尋ねる電話で、自宅に着くと玄関に熨斗付き一升瓶抱えた人達が待っていた。自治会役員として迎い入れる挨拶で、後日その人達は役員選考委員会メンバーだったことがわかった。会との密なお付き合いの始まりだった。
自宅はマスコミに登場することの少ない相模原市にあり、最近は橋本駅前にリニア中央新幹線の駅ができるというので知名度も上がりつつある。神奈川県の北に位置する人口72万人、自治会数約590の一つに加入率は約50%700世帯の我が自治会がある。戸建て子育て世代が多く、こども会や中学PTA活動が盛んな地域である。
定年後の地域ボランティア活動と軽い気持ちで引き受けたが面食らうことばかりで、学ぶこともとても多かった。自治会は13班約50名の役員で運営するが、うち7名の本部役員が運営の中心となる。地域清掃、夏祭り(こども神輿)、秋祭り(例大祭)、スポーツ大会、防犯パト、どんど焼きなどの年中行事が行われる。地域内の小さな神社の境内が主会場となる。中でも 8月下旬の例大祭は、境内狭しと屋台が並び、演芸大会もある晩夏の一大行事となっている。
日本のフォークソング全盛期「今日でお別れ」「また逢う日まで」がレコード大賞という時代に人口29万人で急成長する相模原に縁ができた。以来生活拠点となっているが、自治会と関わるまでは知らないことばかりで、自治会の境界線も知らなかった。自治会活動のお陰で、近所の人との気軽なコミュニケーションや地域の課題を共有する遅ればせながらの地域の仲間入りだった。街灯やカーブミラーそしてゴミ置き場の新設で生活環境改善にも貢献した。
本部役員は会長職も含んで一連の役割を終えるのに7年間を要する。現在最終年で防犯部門や避難所運営を担っているが来月で終わる。役員選考委員としても新たな役員にバトンを渡す目途もたち、今後は地域のボランティアや祭典相談役として、地域を見守り後輩を応援することになる。
神社は氏神と氏子で地域を盛り上げてきた歴史があるが、その神社に導かれ地縁を得たように思う。無縁社会化している現代、要不要論ある自治会だが、地方ではまだ伝統の継承やセーフティネットの役割を果たしていると思う。そして何よりこの地で生まれ育つ子供にとって故郷を伝えるのは大事だと思う。新型コロナで様々な行事が見送られたが、今年は神輿を担ぎ地域を練り歩く元気なこどもたちの声を聞きたい。これからも地域と後輩にエールを送り続けたい。(7期生 榎本)
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