3~4か月ほど前、BS1で中国の作家方方(Fang Fang)とそのブログ日記を知りました。彼女は1955年生まれ、2歳から武漢で暮らし、コロナ禍で都市封鎖された60日間の日々をブログにアップしました。それがネット上で話題になり、毎日数千万人もの読者(訳本の帯には1億になっています)が夜中まで起きて日記がアップされるのを待ち、それから就寝したと伝えられています。
*方方写真出所:https://static.tokyo-np.co.jp/image/article/size1/a/6/6/5/a665613b38b23f62bed9cace418273b0_1.jpg

武漢が封鎖解除された4月8日に英語版の予約販売が始まり、日本では9月末に「武漢日記 -封鎖下60日の魂の日記- 」として翻訳本が出版されました。ネット管理者による削除や「国の恥をさらした」など一部読者からの厳しいバッシングに耐えてながら、毎日の詳細な記録と行政やメディァ等への批判的で建設的な意見が綴られています。

その中から少し長い一文を紹介したいと思います(この一文はBS1でも取り上げられていました)。
【2月24日(旧暦2月2日)から抜粋】
「私は言っておきたい。ある国の文明度を測る基準は、どれほど高いビルがあるのか、どれほど早い車があるのではない。どれほど強力な武器があるのか、どれほど勇ましい軍隊があるのかではない。どれほど科学技術が発達しているか、どれほど芸術が素晴らしいかでもない。ましてや、どれほど豪華な会議を開き、どれほど絢爛たる花火を上げるかでもなければ、どれほど多くの人が世界各地を豪遊して爆買いするかでもない。ある国の文明度を測る唯一の基準は、弱者に対して国がどういう態度をとるかだ」
出所:方方,(飯塚容・渡辺新一訳)「武漢日記」,河出書房新社,2020,p217

とすれば、日本の文明度は高いでしょうか。アメリカ・中国はどうでしょうか、欧州ならどこの国が文明の先進国なのでしょうか、見習うべき国はどこでしょうか。また、弱者とはだれでしょうか。疾病を持つ人々・高齢者・子供たちでしょうか、貧困や人種・国籍・性別・宗教などで不当な困難を抱える人々でしょうか、コロナ感染者やその病棟で働く医療従事者とその家族でしょうか。これらを自問することによって、私の望むアフターコロナの世界像がぼんやりと見えてきたように感じました。

このような固いお話ばかりではなく、日記に多く書かれているのは、マンションに食品の共同購入サイトが出来た!友人が野菜を玄関に置いて行ってくれた!、日頃のうっ憤をSNSで思いっきり晴らした!などの「生活上の雑事と感想」(同上p252)です。方はこんなことを書いています。

「文学は個人の表現だか、無数の個人の表現を集めれば、一つの民族の表現になり、そして無数の民族の表現を集めれば、一つの時代の表現になる」 出所:同上,p186

日本の累計感染者数は既に中国を上回っており、コロナ関連のKiss投稿は今後も続くでしょう。その一つ一つが我々のリアルな感情であり、この時期の貴重な記録になるのだと思います。
(7期 杉村)

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