新型コロナウイルスの騒ぎで外出が減ったせいか、何となくテレビやラジオを聴いていると、この表現はちょっと面白いなあとか、この言い方ってなんか変、などど、内容とは全く関係ないことに目が行く(いや耳が行く)。つい先日NHKラジオで言語学者金田一秀穂氏の講演が流れていた。金田一氏は、祖父京助、父春彦を持つ日本における言語学の中心的な家系の人物。その放送の中でいきなり「イヌとネコ」と言いますか、「ネコとイヌ」と言いますかと始まった。
私はこういった、どうでもいいけどでもちょっと不思議な日本語の話が大好きで、いつもながら興味深く聞いていました。どちらが先でも、もちろん誤りなわけはないが、どちらかというと「イヌとネコ」のほうが聞きやすい(言いやすい)と感じる人が多いようだ。(英語ではCats&Dogs?)
金田一先生は続けます。
では「男と女」?「女と男」? 強調したい方を先に言う? まあ男を先に言う方が多いか。右(みぎ)左(ひだり)はどっち? 熟語では左右(さゆう)で右左(ゆうさ)とは言わないのに、右(みぎ)左(ひだり)のほうが言いやすいか。裏(うら)表(おもて)は? これも音読みだと表裏(ひょうり)。「りひょう」とは言わない。「浮き沈み」は、これも「沈み浮き」とは言わない。(中国語では「沈み浮き」というらしい)この「右・左」や「裏・表」には一応は正解があるようだ。ひらがなだと2音が先で、3音を後にする方が語感の据わりがいいと感じる意人が多いから。西東(にしひがし)というが東西(ひがしにし)は言いづらい。熟語にすると東西(とうざい)なのに。
手足(てあし)も同じ理屈。1音が先で2音があと。足手(あして)とは言わない。こういった表音にルールは無いようだが、何百年かかかってこっちがいいと多くの人が感じるようになったのだろうか。だから文化の発達のしかたが違うと、たとえば方言のように異なった発音や言い方などになって表れているのかもしれない。
さらに金田一先生は数のかぞえかたにも言い及びます。
「一日おきに会う」って、今日会ったら明後日会うことと思いますね。でも1日は24時間です。「24時間おきに会う」としたら、明日のこの同じ時間にまた会わなければならない。
「オリンピックは4年おきに行われる」? つい4を足したくなるが、4年おいたら5年後になってしまう。まあ「毎」を使えば間違いにくい。「一週間おき」と言ったら、来週の今日?再来週の今日? それとも一週間(7日)おいちゃうのだから、来週の明日? もうなんだかわからなくなってくる。「前」って未来?過去?
前を向いて生きていこう(輝く未来ですね)
3年前にあの事故が起こった。(過去だよね)
「この後どうなるか」 (これは未来)
「後始末」(過去の過ち?)
「過去」だか「未来」だか、さっぱりわからなくなってきた。要は文脈で判断しているのですね。
他の言語は知らないけれど、日本語ってかなり面白い言葉だと思いませんか。普通に使っている言葉の中にも面白く、変わった、奇妙なことが多い。でもゆっくり考えてみるとすごく味わい深いなあと感じてしまいます。
コロナに何人感染したかという表象的なことだけでなく、この言い方うまい、この言葉、変じゃない?などど、ニュースも違った側面から聞いていると、案外コロナも面白い。終息と収束。違いを意識して使っているか、たまたま検索で先に出てきた方を使っているか。そんなことをコロナ下で思っています。(正確にはコロナ禍下?)
(7期) 佐野英二
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