立教大などでお世話になった後、東京から岡山に帰省して4年が過ぎた。大学の非常勤講師などを務めたり、地域で読み聞かせの活動などをしたりしながら、フリーな時間は結構楽しんで毎日を過ごしている。この初春、若い友人に誘われ、二人で屋久島に行ってきた。
私は、そもそもスポーツとかアウトドア系とは全く無縁の人間で、この年(67歳)にもなり、私の人生の中に登山などという余地は全くなかった。でも行くなら、誘ってもらった今しかない、と思った。今が一番若いのだから。リタイヤしたら、そこで待っていればいいとも覚悟した。
気持ち的にきっかけになったのは『もうひとつの屋久島から』(右写真)という本を読んだことだ。屋久島と言えば世界遺産のイメージくらいしかなかったのだが、ここに至るまでの屋久島の歴史が書かれていた。江戸時代、島津藩が栄えていたのはこの屋久杉のおかげ、戦争中はお国のため、高度成長期には金儲けのため、立派な杉が次々と伐採されていった。その中で、この屋久杉を守ろうとした人たちがいた。国や大資本を相手に小さな個人が闘ってきたことが、この自然を守ろうという世論を作り上げた。その屋久島に行き、屋久杉を見てみたいと思ったことだった。
行って本当に良かった!縄文杉まで登れた!降りも、足がくがくにならなかった。2日目も、短めの登山ができた。鹿にも猿にもお目にかかれた。(鹿に遭遇するとよいことがあるという)達成感も大きく、自分で自分をほめたい気分だ。大げさに言うなら、人生の大きな自信にもなった。
これもありがたいことが重なったおかげでもある。まず天候が良かった。登山半ばでしんどかった時、同行の女性が私のリュックを背負ってくれた。ガイドさんも友人も、常に「もう少しもう少し」と声をかけ続けてくれ、気づいたら縄文杉までたどり着いていた。朝6時半頃登山口を出発して、着いたのは12時半頃であった。
縄文杉に出会えた嬉しさより、ここまでよくたどり着けたという喜びが大きかった。降りも、予定のバス時間に間に合うように帰ることができた。10時間4万歩の行程。大きな達成感だった。
山の壮大さ、自然の美しさに感動したことは言うまでもない。山の中は、まるで「もののけ姫」の世界だった、苔むす森、せせらぎ、大木、アニメのあの世界に自分がいるのが不思議な感覚だった。屋久杉を守ろうとした人たちの気持ちもよく分かった。
これをきっかけに山ガールになる、とはいかないが、意識的に近くの山など登ってみようとか、自然に触れ合う時間をもっと取ろうという気持ちになった。新しい挑戦もしてもいいのだとも思い、これからの人生も楽しみになってきた。(7期生 高見京子)
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