大和田順子先生からのご寄稿

 早いもので「立教セカンドステージ大学」の講師を勤めて10年目になります。もともとは企業でマーケティングの仕事をしていましたが、2002年に「ロハス:Lifestyle of Health and Sustainability」というアメリカで生まれたライフスタイルを日本に紹介し、その”健康と環境(サステナビリティ)に配慮したライフスタイル”を広める活動に尽力してきました。
 その後、日本では有機農業や自然エネルギー、ローカル経済はどうなっているのだろうか。という問題意識から全国各地を訪ね歩き、『アグリ・コミュニティビジネス』(2011年、学芸出版社)という書籍にまとめました。この取材が私と農山漁村との出会いとなりました。コウノトリや渡り鳥など生きものと共生する農業、有機農業や地域の自然を生かした地域づくり、用水路の水や森林資源を活かした自然エネルギー、地域固有の豊かな食文化・・・
 私は東京生まれ・育ちですが、近年はそうした“ふるさと”を持たない人が増えています。ところが、各地の農山漁村を歩くほどに、その固有の農林漁業や暮らし、郷土料理、農耕儀礼、そして美しい景観があることを知ったのです。
 そして、2014年に「世界農業遺産」(Globally Important Agricultural Heritage Systems、GIAHS/FAO:国連食糧農業機関)と出会いました。国内の委員(農林水産省・世界農業遺産等専門家会議委員)を務め、認定された地域の活性化支援をしています。ユネスコの世界文化遺産は有名ですが、農業遺産は2002年にスタートした新しい制度です。世界的に重要な農林漁業をシステムとして認定し、継承していこうというプログラムです。農林水産省によれば、「社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ及びシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、将来に受け継がれるべき重要な農林水産業システムを認定する制度です。」世界では21か国58地域、日本では11地域が認定されています。各地を訪問していますが、いずれも素晴らしい、日本の宝とでもいうべき地域ばかりです。
 セカンドステージの授業「サステナブルコミュニティ論」では、これら世界農業遺産認定地域をはじめ、各地の農山漁村暮らしや、食文化、地域づくりからサステナブル(持続可能)な社会の思想や実践を学んでいます。日本の国土の9割は農山村ですが、それを支えているのは1割以下の人口です。そうした地域が私たち都市部に暮らす人々の食べものやエネルギーを生産し、世界に誇る美しい景観を維持してくれています。
 私たち都市部に暮らす者が、いかにそうした農山漁村を知り、応援することができるのか。またSDGs(国連・持続可能な開発目標)の目標達成に、個人がいかに参画することができるのか。受講されている皆さんの受講動機は「持続可能な社会づくりを知りたい」「ふるさとをなんとかしたい」「農業や地方創生に興味がある」などですが、こうした日本の宝を後世に残していくために、いかに都市部に暮らすセカンドステージの私たちが貢献できるのか、これからもご一緒に考え、行動のきっかけを見つけていきたいと思います。