特別展 御即位30年記念「両陛下と文化交流―日本美を伝える―」
名画(美術)鑑賞友の会 鑑賞記

会場  東京国立博物館(上野)
鑑賞日 平成31年3月31日(日)
参加者 篠塚、平野、河村、対馬、佐藤 計5名

 3月最後の31日10時、翌日は新元号という日に東京国立博物館に集合しました。折しも上野公園の桜は満開を迎えようとしており、天気も大変良かったので相当の混雑を予想していましたが、国立博物館付近はさほどではなく、館内でもゆっくり鑑賞することができました。この展覧会は4月いっぱい開催していますが、展示物のいくつかは3月末日で終わるので、急きょ31日に出かけることになり、参加者が少なかったのは残念でした。今回の展示は平成天皇の退位に伴うもので、天皇、皇后両陛下に関わる展示物を数多く見ることができました。

「悠紀・主基地方風俗歌屛風」 六曲二双 宮内庁用度課所管
 最初に目にしたのは、1990年11月の平成天皇即位の大嘗祭で皇居の豊明殿で催された大饗の儀で両陛下の席の左右に飾られた大屏風です。この大屏風は即位儀礼の調度として古来制作されてきたものです。近代では大和絵の様式を継承し、美しい四季の移ろいを群青で表す伝統的な日本の美の特質です。
1 「悠紀地方風俗歌屏風」(ゆきちほうふうぞくうたびょうぶ)東山魁夷(1908~1999)

悠紀と主基は大嘗祭で新穀を奉納する国のことで、この時は悠紀地方(京都以東)に秋田県、主基地方(京都以西)に大分県が選ばれました。
 東山魁夷は克明なスケッチを重視した画家で、90年1月、宮内庁の制作依頼を受け、3月に十和田湖、4月に角館、5月に男鹿半島に出かけました。大和絵の技法など自らの作風と異なる画趣で苦心しました。

2 「主基地方風俗歌屏風」(すきちほうふうぞくうたびょうぶ)高山辰雄(1912~2007)

 一方、大分出身の高山辰雄の「主基」は小刻みな場面転換で彩られ、興味深い風景が描かれています。右はやすり霞にはさまれて煙突が立ち並ぶコンビナートをあしらい、左には耶馬渓の紅葉、雪化粧のくじゅう連山や日田杉林などと情緒が広がり、雪深き道に人の姿も見えます。彼は故郷に愛情あふれるまなざしを注いでいます。その堂々たる風格と鮮やかな色彩には心を打たれました。今年の11月に行われる新天皇即位の大嘗祭の絵が何になるかとても楽しみです。

「養蚕天女」高村光雲作 宮内庁三の丸尚蔵館蔵
 次に印象に残ったのは「養蚕天女」という高さ40センチあまりの木彫りの立像でした。これは大正13年の高村光雲作ということで期待していた人が多かったようです。その像は純国産種の繭・小石丸を手にし、頭には繭蛾の宝冠を付け、足元には桑の葉が添えられた、優美な女神像でご養蚕の守護神として制作されたものです。近代以降の歴代皇后は明治期に照憲皇太后が始められた皇室のご養蚕を引き継がれています。近代彫刻を牽引して活躍した高村光雲は皇室の御用も多く手掛けていました。

 その他に酒井抱一の「花鳥十二か月図」より「三月 桜に雉子図」や平成天皇が2歳のお誕生日のお祝いに昭和天皇から拝領された真っ赤な着物「赤縮緬吉祥文様刺繍振袖」もありました。これは金糸を用い、鶴や菊花、竹などの吉祥模様を刺繍した格調高い品でした。

 この展覧会は今後もしばらく展示物を変えて続くので、名画の会の方々には是非見ていただきと思います。また、国立博物館には常設展として多くの展示物があり、時間をかけてゆっくりもう一度見に来たいと思いました。館内を見学後、庭を散歩しましたが、うららかな天気に多くの植物を見ながら春の一日を楽しむことができました。

平成31年4月 佐藤祐子記

画像引用先
特別展 御即位30年記念「両陛下と文化交流―日本美を伝える―」

この記事の投稿者

八期生編集チーム