年末か年初の日経新聞だと思いますが「モノより『いいね』」の記事があって、関心をもちました。記事で取り上げられていた28才の男性(独身)の部屋には、机と電気スタンドとパソコンだけ。「欲しいモノ?ありません!」。所有することに意味を感じないとのこと。昨年末のNHK「クローズアップ現代+」で取り上げていた中古フリマアプリ "メルカリ"(右写真出所:https://www.mercari.com/jp/)を良く利用する女子大生は、クローゼットを開けて「ここにある服の8割は古着です。2-3回着たら、また直ぐに売ります」「同じ服を着ていたらインスタでバレちゃうから、高い新品なんか買いません!」と話していました。仲間を作って「いいね!」の交流が大切で、モノの長期保有(=所有)に執着しない人々が増えているようです。

この感覚が、今の私にはよくわかります。実は、息子達夫婦から「シニアが、戸建てにすむと骨折が増える。なるべくフラットな所で住め!」・「戸建ては冬が寒いので、血圧が上がり脳と心臓に負担がかかる!」と言われて、本年3月に漸う重い腰を上げて、戸建て住宅からマンションへ引っ越しをしました。その折、家に有るモノの6~7割りは不要品だと家人共々実感しました。自宅は、間違いなく未使用品・低稼働品の物置になっていました。モノを買う時にお金を使って、収納に頭を悩ませて、破棄するにもお金を使って、全くもって「所有」は厄介かつスマートではありません。その結果、引っ越し費用より処分経費の方が相当高額となりました。特に、家具などの耐久財と衣類・着物などの半耐久財の「所有」は、なんとお金のかかる仕組みなんだ!と痛感しました。(“負”動産とされる、駅から離れた不動産物件も同じかもしれませんね)。

若い世代は「モノより『いいね!』」。共稼ぎの中年層は生活に追われて日々の暮らしで精一杯。シニア世代はあまりモノを必要とせず、むしろあの世に向けて「断捨離」中。この様な中で、長期所有中心の購買行動から「利用」の比重が大きい生活スタイルに移行するのか、それとも人間は本質的に独占欲が強くてあくまでも長期所有が中心なのか、新たに興味が湧いてきます。(過日、大学の先生方と個別に利用経済“Sharing economy”の可能性について意見交換をした際も、先生方の意見は真っ二つに分かれていました)。

少し視点が変わりますが、春先のテレビ番組で、ある日本の哲学の教授が、ツルツルスベスベした生活空間を予想していました。確かにマンションでは箪笥などの家具は原則不要です。そして今後は、壁に組込まれたテレビ、住設化した収納家具や冷蔵庫、流し台/シンクと一体化したオーブンレンジや食洗が普通になると思われます。部屋にモノを持たず情報だけに囲まれた若い人たちは、このツルツルスベスベした生活世界を先取りしている様にも見えます。

私の年齢から男性の平均寿命まであと10年と少し。この間、街に出て「所有と利用のせめぎあい」を観察出来たらいいね!と思っています(7期:杉村)

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