『至上の印象派展ビュールレ・コレクション』の事前学習 名画(美術)鑑賞友の会

 

日 時:2018年1月16日(火)15時~16時半
場 所:立教大学内 松本楼 
講 師:名画の会会長 渡邉敏幸   
参加者:12

 スイスの大実業家エミール=ゲオルク・ビユールレ(1890年~1956年)は生涯を通じて絵画収集に情熱を注ぎ、傑出したコレクターとして知られている。
17世紀のオランダ派から20世紀の巨匠に至る作品、とりわけ印象派・ポスト印象派の作品は傑作中の傑出が揃い、そのコレクションの質の高さゆえ世界中の美術フアンから注目されている。

ビュールレ・コレクション展覧会

 この度(2020年)、ビュールレ・コレクションの全ての作品がチューリヒ美術館に移管されることになり、コレクションの全体像を紹介する最期の機会として、日本での展覧会を実現することとなった。

 本展では、近代美術の精華といえる作品約60点を展示し、その半数が日本初公開である。絵画史上、最も有名な少女ともいわれるルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》、スイス国外に初めて貸し出されることになった4メートルを超えるモネ晩年の睡蓮の大作など、極め付きの名品で構成されるこの幻のコレクションの魅力のすべてを、多くの方々にご堪能いただきたい。

見どころ1:至上の印象派コレクション

 本展ではドラクロワ、ドガ、マネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、モネ、セザンヌ、マティス、ピカソと驚く、豪華な作家たちの競演が繰り広げられる。特に印象派・ポスト印象派の作品は傑作揃いで、絵画史上最も有名な少女とも言われるルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》とセザンヌの《赤いチョッキの少年》は印象派の中でも人気の高い両巨匠の最高傑作として知られている。

見どころ2:全て一人のコレッターが集めた

 ドイツで生まれスイスで後半生を過ごしたエミール・ゲオルク・ピユールレは、第一次・第二次世界大戦を経験し、実業家として成功して富を築いた。彼は心の拠り所美術作品を収集し、コレクションはチューリヒにある邸宅の隣の別棟に飾られた。彼の死後、別棟は美術館として一般公開されたが、スイス国外にコレクションがまとめて公開されたのは、過去に数回のみであった。2008年、世界的に報じられた4点の絵画盗難事件以来、一般公開が規制され、2020年にチューリヒ美術館に全コレクションが移管されることになる。今回はビュールレのコレクターとしての全体像がみられる最後の機会です。

見どころ3:出品作のおよそ半数が日本初公開!

 ビュールレ・コレクションには、モネ、ゴッホ、セザンヌなどの傑作が多数含まれ、近代美術の精華ともいえる本展の出品作品、約60点の半数は日本初公開です。なかでもモネの代表作の一つ、高さ2メートル×幅4メートルの大作《睡蓮の池、緑の反映》はビールレがパリ郊外のジヴェルニーにあるモネのアトリエに足を運び、自分の目で見て購入を決めた作品で、これまでスイス国外から一度も出たことがない。日本人がまだ見たことのないモネの「睡蓮」、門外不出といわれたモネの最高傑作をこの機会にご覧ください。

作品紹介

Chapter1 肖像画
Chapter2 ヨーロッパの都市
Chapter3 19世紀のフランス絵画
Chapter4 印象派の風景―マネ、モネ、ピサロ、シスレー
Chapter5 印象派の人物―ドガとルノワール
Chapter6 ポール・セザンヌ
Chapter7 フィンセント・ファン・ゴッホ
Chapter8 20世紀初頭のフランス絵画
Chapter9 モダン・アート

(出展 展覧会ホームページよりhttp://www.buehrle2018.jp/)

ポール・セザンヌPaul Cezanne (1839~1906) 

 南フランスの古都エクス=アン=プロヴァンスで生まれ、同地で亡くなった。その後、20世紀初頭以後にわかにその重要性が欧米を中心に認識され、多くの芸術家たちの手本となった。今日、「近代絵画の父」として美術史の中で燦然と輝く不滅の画家である。

「感覚の実現」

 セザンヌが生涯追い求めた芸術の目標は、「感覚の実現」という言葉に尽きる。晩年、交友があった若い芸術家に宛てた手紙の中でセザンヌは「感動を持つ者のみが与えうる<衝撃>をあなた方の芸術に刻みつけなさい」と助言している。サロンの審査員たちを震撼させ、印象派展を見た批評家たちにショックを与えた、若き日のセザンヌの信念は<どう考える>ではなく<どう感じるか>にあり、その姿勢は生涯変わらなかった。また、「ルーブル美術館は、物の見方を教わる良書ではあるが、急いで美術館の外に出て、それまで見てきた物を一切忘れ、自分の目で自然を眺めて強烈な感覚を全身で受け止めなさい。そしてこれを自分自身で編み出した手法で表現しなさい」とも教えている。

「自己の実現」

 セザンヌ芸術の命題である「感覚の実現」は、「自己の表現」でもあった。芸術家としての原初的力である「気質」さえあれば、お決まりの美意識に満足して新しい感覚を嫌悪するブルジョワたちに衝撃を与えることができると考えたのである。セザンヌの生涯は、一見、私的世界への埋没に見えるが、急速に近代化する時代にあって、徐々に古ぼけていきながらも依然として抑圧してやまない美的規範や趣味の呪縛から人々を解放し、新しい芸術のあり方、自由を築き上げることに捧げられた。その意味で、極めて社会的な営みであった。

 「感覚の実現」は、彼が生きた時代や社会に対する粘り強い闘いでもあった。セザンヌは、産業革命以降、機械によって作られた人工物が生活空間にあふれ始め、科学主義、実証主義、商業主義が台頭し、効率性、利便性、商品性といった新しい価値観が浸透していく社会の変貌を目の当たりにした。しかし、そうした時代にあって、「感覚」という<本能>や<直感>の力を信じ、そこに自らの芸術の根源を求め続けた点で、機械による間接的で自動的な造形とはまったく異質な、自らの眼と手による直接的で真に創造的造形の可能性を同時代に示し続けたのであった。

特徴 セザンヌは何故近代絵画の父と言われたのか

従来の絵画 =「空気遠近法」「山紫水明」遠くにいけば行くほど、薄く、淡く霞んだ→「単眼視」

 セザンヌの絵画 =「サント・ヴィクトワール山」巨大なかたまりとして存在しているように描く。近くで見た近景のように描く。山がただ画像ではなく彫刻のようなかたまりの存在感 →「両眼視」

セザンヌは独特の見方で遠くの風景の立体感(=遠近感)を捉えていた

 人物画では顔は無表情。構図,構成、存在感の表現にこだわった。20世紀最大の画家、ピカソはセザンヌから多大な影響を受け、キュビズム技法を生み出した。
サント・ヴィクトワール山等の風景画を鑑賞する時、正面、左右から見ることは、セザンヌに対して造詣がある人と推察される。

鑑賞日(案) 『至上の印象派展ビユールレ・コレクション(平成30年2月14日~5月7日)』 

日 時: 平成30年 2月16日(金)
会 場: 国立新美術館(乃木坂)
観覧料: 1600円(前売り1400円)
集合時間:午前中、昼、3時、5時、その他

情 報 絶対に見逃せない2018年美術展

・プーチキン美術展(マネの草上の昼食)
4月14日~7月8日 東京都美術館

・フェルメール展(8点来日)
10月5日~2019年2月3日 上野の森美術館

・ムンク展(叫び)
10月27日~2019年1月20日 東京都美術館

 

以上 (会長 渡邉敏幸 記)

この記事の投稿者

八期生