学びの場をデザインするーー日本からミャンマーへ

1)RSSCのスタート

 RSSCが来年の4月に創立10周年を迎えるとのこと、嬉しさとともによくここまでこれたという気持ちで一杯です。それは、セカンドステージ大学という全く新しい教育機関を、既存の大学組織の中に作る際の産みの苦しみと関連しているからかもしれません。

 当時、私は総長補佐をしており、坪野谷先生と一緒に新しい生涯学習センターを作ることになっていました。二人で幾つかの大学を訪問し、ヒアリングを重ねました。しかし、私にはどれも朝日カルチャーセンターの大学版でしかなく、立教大学があえて同じようなものを作る意味がわからなくなってしまいました。このとき、定年退職の時期を迎え、人生のセカンドステージを迎えようとする人たちに、大学が学びの場を提供してみてはどうだろうか、という発想が生まれました。

 その学びの場を通じて、新しい人間関係が形成される。そして、その新しい人間関係をベースにして、それぞれの人たちがその後の人生をデザインしたら、かつての企業社会とは異なる市民社会ができるのではないかと考えました。多くの人たちに支援で、生涯学習における立教大学モデルともいうべきものを創り得たのではないかと思っています。

2)ミャンマーでの寺子屋支援

 現在、私はミャンマーの寺子屋支援活動をしています。寺子屋制度は、仏教寺院が学校に行けない子供達に無料で教育を行うものです。ミャンマーが世界の最貧国の一つに挙げられながら、高い識字率を誇っている理由の一つは、この寺子屋制度のおかげであると思っています。

 今日、学校に行けない子供達をどのように教育するかが、貧困の連鎖を断つ鍵であると言われています。親が貧しく子供が学校に行けない、その子供が読み書き計算ができなければ、社会の最底辺の仕事にしか就けない、ということになります。結果として、また貧しさからその子供が学校に行けなくなるという悪循環が生じます。

 この活動は校舎の建設運動が中心ですが、今日では寺子屋教師の研修ワークショップなどに移行しつつあります。将来は、ミャンマー初の女子師範大学でも創設できたらと思っています。学びの場のデザインは日本からミャンマーに変わりますが、これが私のラストステージの仕事になりそうです。

立教大学 名誉教授

跡見学園女子大学 教授

笠原 清志