7月、恒例の山合宿で白馬を訪れた。実に20年ぶり。懐かしさがこみ上がる。私と山の出会いは白馬から始まる。大学の4年間、部活の夏合宿は大町。地元出身者から白馬岳(しろうまだけ)・唐松岳・爺ケ岳の説明を聞いても、どれがどれやら山の形と名前が一致しなかった。ただ、いくつもの山の連なりが私を取り囲んでいた。
翌年の夏、私は3泊4日の白馬岳縦走にトライしていた。のちの夫(山の写真を撮るのが趣味だった)に誘われ、登山経験ゼロの私が躊躇することなく白馬岳山行を決めたのだ。リュック、登山靴、ニッカーボッカー、毛糸のくつ下、帽子にヘッドライト等を買い揃え、夜行の電車に乗った。翌朝アイゼンを付け、恐々万年雪の白馬大雪渓を歩き、2932mの白馬岳山頂に立った。霧の中を進んだ先には小さな白い花が無数に咲いていた。あまりの素朴な佇まいに「これが花畑?」。夫は黙々と360度のパノラマをカメラに収めていた。
私はすっかり山歩きの虜になってしまった。暇を見つけては中央・南アルプス、東北・北海道、八ヶ岳、東京近郊の山々を歩いた。子供ができると本格的な山歩きから遠のいてしまったが、白馬にはスキー板を持って足繫く通った。車にキャンプ道具を積んで出かけた先々で、ちょこっと山歩きを楽しんだ。今では息子も立派な山男だ。
50歳を過ぎた頃から同僚たちと山歩きを再開し、現在に至っている。月1ペースで奥武蔵や奥多摩の日帰り山歩き。7月は二泊三日の山合宿を継続してきた。最近はメンバーの高齢化もあり、登山口までリフトを使い、源泉かけ流しの温泉とまあまあ美味しい食事を提供する秘湯の宿に泊まる〈大名合宿〉にシフトしている。



歩けるうちにまた白馬の山を登りたいという気持ちは持っていたが、ハイシーズンの宿の確保が難しい。インバウンドの影響や山歩きツアーの人気と重なり、白馬には国の内外から多くの人が押し寄せている。そこで今年は日程を早めての合宿となった。ゴンドラとロープウェイを乗り継いで栂池高原へ、そこから白馬大池までの本格登山を計画。ところが当日は雨が降ったりやんだりの生憎の天気。計画を変更し、急遽八方尾根自然研究路から八方池(2060m)を目指すことに。
ゴンドラとリフト1本を乗り継いで標高1400mのうさぎ平に到着。風が強く二本目のリフトが止まっていたが、荒れた天気の中、八方池を目指してトレッキングを開始した。標高1830mの八方池山荘からは遮るものもない尾根を強風に吹き飛ばされそうになりながら歩くこと3時間。3つのケルンを観ながら神秘の池、八方池へ。晴れていれば、池には白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳の白馬三山が映るのだが、今回は見ることができなかった。
しかし、7月の白馬はとっておきの楽しみもある。夏の間だけ咲く可憐な花々との出会い。ハッポウタカネセンブリ、ハッポウウスユキソウ、ハッポウワレモコウ、ハッポウアザミなど、八方尾根の固有種が足元にひっそり咲いている。リフトの足下には、クガイソウ、クルマユリ、タカネナデシコ、ショウジョウバカマ、ミヤマアズマギク、シモツケソウ、ヤナギランなど様々な高山植物が咲き乱れ、短い夏を謳歌している。
そして、今年の宿はリゾートホテルの佇まいを見せる白馬東急ホテル。ホテル内の移動はスリッパ、浴衣はNG。ドレスコードがあるレストランでフレンチ懐石をいただくことに。まさに大名山合宿。
最終日は、最近TVでも注目されている岩岳マウンテンリゾートへ。様々なアクティビティを揃えているが、何といっても北アルプスの山々がすぐ目の前に迫っているのが魅力だ。思わずアルプスの山々に向かって「ヤッホー!」と声をあげてしまった。(7期生 齊藤喜久枝)
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