耳の奥に残る、美しく重厚な男性デュオのハーモニー。それが、私の「推し活」のすべての始まりだ。異なる声質が一つに溶け合い、圧倒的な熱量となって押し寄せてくる感覚。あの瞬間のときめきを、私は今も忘れることができない。

最初は、YouTubeで彼ら”all at once“の歌声を検索し、画面越しに聴くだけで十分に満足していた。夕飯の支度の時間や、日々の生活のふとした隙間時間に、スマートフォンから流れてくる彼らの美しい歌声に耳を傾ける。それだけで私の日常は華やいで最高に贅沢な癒やしの時間になっていた。しかし、彼らの音楽に触れる時間が長くなるにつれ、私の中に静かな、けれどどうしても抑えきれない贅沢な欲求が芽生え始めていた。

   「この五感を震わせるハーモニーを、どうしてもこの耳で直接聞いてみたい。
     彼らと同じ空間に立ってみたい」

70代を過ぎて、まさか自分自身にこれほどまでに熱い情熱が訪れるとは、夢にも思っていなかった。

いままでの私は、歳を重ねるごとに、未知の扉の前で一歩を踏み出す勇気が少しずつ薄らいでいくような気がしていた。世間でよく「推し活は脳の活性化に良い」「免疫力のアップにつながる」と耳にすることがあっても、自分自身には関係のない世界と捉えていたのだ。自分自身が推し活をするなんて想像したこともなかった。けれど、彼らの音楽は、私の中に眠っていた「ときめき」や「好奇心」を鮮やかに呼び覚ました。

「生歌を聴きたい」という一心で、私は慣れないインターネットを使い、手探りで彼らのライブについて調べ始めた。画面と格闘しながら、暗号のような手続きを進めてチケットを予約する。それは私にとって、小さくて、けれど人生の新しい1ページを開くような大きな挑戦だった。

迎えたライブ当日、会場へ向かう道中は期待よりも不安の方が大きかった。「周りは若い人ばかりではないだろうか」「私のような年齢の者が、一人で紛れ込んで浮いてしまわないだろうか」。そんな緊張で胸を詰まらせながら、思い切ってライブ会場の重い扉を開けた。その瞬間、ぶわっと押し寄せてきた熱気と高揚感に、私はただ圧倒されるばかりだった。

しかし、そんな不安や気後れは、ステージの幕が上がった瞬間にすべて吹き飛んだ。パッと眩いスポットライトが当たり、そこに並び立つ2人の姿が浮かび上がったとき。そして、至近距離から聞こえてきた彼らの歌声を全身で受け止めたとき、その響きは私の想像を遥かに超えるものだった。言葉を失ってステージを見つめているうちに、気づけば、周りの若い世代の人たちに混じって、夢中で手拍子をしている自分がいた。あんなに不安だったはずの私が、心地よい音楽の世界で、完全にその中に溶け込んでいる。胸の奥から湧き上がる熱い感情を覚えながら、「ああ、私は今、第二の青春を謳歌しているんだ」と、心の底から実感していた。

すべてのステージが終わり、客席の明かりが灯ったとき、身体に残っていたのは心地よい疲労感と、素晴らしいサウンドの余韻だった。会場を出た私の足取りは、来る前の重さが嘘のように軽やかで、夜風がとても心地よかった。

彼らの音楽に出会ったことは、私にとって「未知の世界を知る良いタイミング」だったのだと思う。いくつになっても、好奇心を持って前向きに日々を過ごしていれば、思いがけない新しい道が開ける。それを、彼らの2人の歌声と、あの日一歩を踏み出した自分自身の勇気が教えてくれた。

私の推し活の歴史は、まだ始まったばかりで浅い。けれど推しに出会えたおかげで、今の私は日々たくさんの活力をもらっている。人生の転機はどこにあるか分からない。これからも、この胸のときめきを大切に、推し活を楽しみながら、そして彼らの歌の歌詞にもあるように素敵に充実した歳を重ねていきたいと思う。(七期生 中島香代子)


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