一昨年、私が参加している講座で「どのような政治・経済システムが望ましいか」が話題になり、日・英・EU諸国がモデルとして取り上げられました。参加者7-8名(含:留学生)の意見は分かれました。討議を聞いて指導教員から「住みたい国に移住するのも良いね」との発言がありました。纏まった結論はありませんが、移住提案への意見もたくさん出て、記憶に残る楽しい時間となりました。

そして昨年の初秋、ドイツ永住意向の次男家から下の子(4歳)が通う幼稚園のクラス写真が届きました。そこには、さまざまルーツを持つ3歳~5歳の子供たちが写っていました。上の子(11才)にも、Zoomでギムナジウムの友達のことを尋ねると「◎◎のmamaはフランスでpapaはドイツ」・「★★のおじちゃんはたぶんイラン」・「※※はモロッコだよ」…と教えてくれました。

バイリンガル、トリリンガル、更にクァドリンガルのクラスメイトもいるようです。前回、上の子と一緒に帰国したロンドン生まれの日本語補習校の友達は、mamaは日本人でpapaはリトアニア出身の内科医。学校はドイツ語、mamaと二人の時はだいたい日本語、papaとは英語かドイツ語、「papaはロシア語も習って欲しいみたい」と話してくれました。

この子達が大人になり、生活に必要な知識やスキルを身に付けると「住みたい国に住む」のは普通のことかもしれません。住みたい国で住む人が増えると、自国の若い世代を国内に留め、海外から若い優秀な人々が移り住むように国の姿が変わって行くのでは…とも思い始めました。

海外永住者数推移(2025年58万人)
=出所:日経新聞2026-3-12=

この春の日経新聞には「年齢に拘らない“せかさない教育”と“地球市民(グローバル・シチズンシップ)”を求めて海外移住する日本人家族が増加している」という記事がありました。他方、アジアを中心に日本定住を望む外国の人々も増えています。

“地球市民”の類似語に古くから“コスモポリタン”があります。世界/地球(cosmos)を住まいとする市民(polítēs)、国籍や民族を超えて世界全体と人類であることを優先しようとする人々のことです。たとえば、作曲家武満徹(1930 – 1996)はこんな発言をしています。

「もちろんぼくは、日本の文化とか伝統といったものを大事にしているし、そこから色々なものを引きだして自分の音楽の中に取り入れている。でも、ぼくはいつも日本人としてではなく、一人の人間として作曲してきたつもりです。ぼくはたまたま日本で生まれ育ったから、自分をよりよく表現するために日本を通して表現します。でも、あくまでぼくの音楽は一人の人間として書いているのだから聞く人も一人の人間として聞いてもらいたいと思っているんです。そこに民族性を持ち出されたくありません」

出所:『武満徹:音楽創造の旅』立花隆(2016)

もし外国との軍事的緊張が高まれば、武満はこの発言だけで炎上するでしょう。歴史的にもコスモポリタンには平和が不可欠です。また、人口が減少する中でポテンシャルの高い日本人家族の海外移住が増えている一方で旅券保有率は約17-18% (米国約42%、ドイツ約80%)まで低下していること、選挙活動や一部のSNS空間が包容ではなく排除の手段として機能し始めていることなど気になる事象も増えています。

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“生まれ育った国や民族の文化を大切にする気持ち”と“人々/世界の多様性を認め合うこと”は共に大切で両立できると思います。冒頭の「どのような政治・経済システムが望ましいか」の問いに、今は「さまざまな人々が安心して暮らせる街、コスモポリタンに寛容な国」と答えようと考えています。  (7期生 杉村) 

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