私は、この秋で人生の過半を過ごした会社生活から身を引いた。卒業して半世紀を超す時間を子会社や関係法人を含むものの、一つの会社で過ごしてきた。色々な経験をし、楽しい思いも、苦しい思いもあった。永くもあり、瞬きの時でもあった。やっと自由に、気ままに時間を使えると思ったが、いざこれからと思うと、どう残された時間を過ごせばよいのか、悩むことになった。
皆さんが寄稿されているように、国内外を旅行するのも良いかも知れないと思ったが、現在のオーバーツーリズムを目の当たりにし、災害や感染症のリスクを思うと、腰が引けてしまう。それに国内は、北は礼文、利尻から南は宮古、石垣まで全国47都道府県はほぼ訪れており、行きたい先は周り切った。海外も高校時代から、その後の仕事での出張を含めると、北米、メキシコ、アジア、ヨーロッパのめぼしい先はおとずれており、今更老体に鞭打って飛び回ることもないかと思ってしまう。
では、趣味はと考えるとこれもである。スポーツはいまでも機会を見つけては山歩きや、ウオーキングは行っているし、テニスなどに誘われることもある。地元ではスポーツイベントのボランティア活動にも参加している。読書も年間で100冊程度は雑多なジャンルであるが、読みこなしている。一方で学校時代の仲間とは、月一程度は旧交を温めなおし、会社の仲間や、それ以外の知人とも落語会、音楽会、映画鑑賞、会食などの会を定期的に持っている。これ以外に地域活動にもできるものには参加しているが、参加すればするほど、行事は増えて行く。
そんななか、これだと再確認したのは、家族や、気の合った友人と時と時間を共有することの楽しさである。一つは家族の勧めもありチェロのプライベートコンサートにはまった。20~40人程度の小規模コンサートであるが、今までのチェロの定番のクラッシック演奏会ではなく、歌謡曲から、映画音楽、邦楽、洋楽のタンゴに至るまでをピアノとの掛け合いと、おしゃべりで進めるもので、これまでのように居眠りしてしまうこともなく、のめり込んだ。
また、もう一つ今年気に入って興味を持ったのが雅楽である。今、私は横浜に住んでいるが、この春行われた開港記念式典に招待されて参加した時に聞いた、東儀秀樹さんと息子さんの典親さんの親子デユオである。これにも完全に魅了された。篳篥をはじめとする雅楽器とギター、ピアノの親子コラボには新しい魅力を注ぎ込まれた。
また、これまで敬遠気味だった美術鑑賞も友達に引き込まれ楽しんでいる。湘南の山の上ギャラリーで7月に見た、十時孝好の「USAGI」には生命力と躍動感を吹き込まれた(最上段写真)。これに刺激され、最近は、上野の森にも出向き、国立博物館では、かつて話題となったテレビドラマ半沢直樹にも利用された大階段を上り、日本美術を堪能し、平成館では考古美術を楽しんだ(上写真)。
最後になるが、今、私は「自分仕舞」を意識している。地球が誕生して45億年、ヒトの誕生が約200万年前、ホモ・サピエンスは40~25万年前に現れたといわれるが、さらに地球の歴史を1年と捉えると人の歴史は約4時間、そして産業革命以降の歴史は1秒。もっと身近に言えば立教学院の創設は150年前、そして私たちがRSSCに入ってから今年は17期、10年が経過した。1秒の人類の歴史から見ると瞬きの間にもならない。
7期生の多くは、すでに後期高齢者であろう。残された時間は多くない。精神的にも、肉体的にも健康で元気に過ごせる時間を有効に使い、思い切り楽しみ、自分仕舞を完結させたいと思う今日この頃である。(7期 矢野泰秀)
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