・「半地下に住む貧しい家族」が金持ち家族に寄生し、知恵と技とを駆使して宿主の全てを乗っ取ってしまう」と勝手な筋書きを想像、さすがポン・ジュノそしてカンヌさんアカデミーさん、そんなミエミエの話には見向きするわけもありません。

・映画は固定化・拡大する格差・不平等社会の不条理とそこに生きる人間の「狡さ、しぶとさ、滑稽さ」そして何より「怒りと悲しさ」を、教訓的ではなくユーモアたっぷりに見せながら分厚い表面の皮を一枚ベロッとむいて、その下に潜むものをズンと残して置いていく。「観たよ!」と誰かに言いたくなったり、「もう一度観たい!」と思わせられてしまう映画です。でも決して眉にしわを寄せて観てはいけません。前半はダークだけれどマンガチックな展開で笑う場面が盛りだくさん、そして中盤・後半とシリアスへ悲劇へと二転三転、油断ならない132分の映画なんです、何しろ面白い。

・「ネタバレをしない」とのお約束があるようなので、許される範囲を手探りで…。(スラム街の)「半地下住居」と高台の豪邸がその舞台。(黒澤明の「天国と地獄」を思い出します)。家族全員が失業中のキム一家、大学入試に何度も失敗している長男ギウが、大学生の友人から頼まれて、企業経営者パク氏の娘の英語家庭教師となるのがドラマのゴング(「偽の延世大学生」)。妹のギジョンもアートセラピストを偽証して、そして父・母も…。こうしてキム一家は最高の“パラサイト先”を捕え、宿り浸食していく。こんな、普通の日常では決して交わることのない2つの家族が交差した時から、想像を超えるおかしく・恐ろしく・悲しいドラマが始まっていく…。そして大雨が2つの家族に降りそそぐとき、どうにも制御できない爆発、残酷な現実の姿となって現れる――こんなお話し。高台の豪邸とその住人にとっては、大雨も「ただの雨」、翌日は「おかげでPM.2.5のないパーティー日和」。半地下の町では大雨は濁流・洪水となって半地下や町を襲い・水没させ住む人の生活を奪う、避難所は足の踏み場もない。ここでは一つの雨も生と死の最前線だ。

プログラム(表表紙)

プログラム(裏表紙)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・プログラムの表紙に物語が映されている、表・裏表紙とも高台の豪邸の同じ場所。表表紙は、登場する3種の住人(家族?)、そこかしこに置かれた幾つかの物。…整った身なりのパク一家、素足でラフな服装のキム一家(皆素足)、床に投げ出された素足だけが見える女(?)。①目が隠された人の顔。②パク氏の左の靴の白い筋は「黒いパンティー」?③ギテクの妻の右足は「便所コオロギ」?④投げ出された素足の女は寝ているの?家族はいないの?と仕掛けがいっぱい …。「水石」「絵画」「ケーキ」「大きな緑の庭とインディアンテント」「照明」、みな出来事の起点で何かを暗喩する物。私としては「車のキー」も置いておきたいなぁ。裏表紙には、この家の主人と言わんばかりに3匹の犬を従えて歩く家政婦、全体の黒く大きく区切られた上下の空間…。
※映画予告編(click⇒)  https://www.youtube.com/watch?v=VG9PjxVMd08

・韓国は「障壁社会」、格差が固定拡大し、富と貧困が世代を超えて継続する状況を「クムスジョ(金のスプーン)」「フクスジョ(泥のスプーン)」というそうです。N放世代(恋愛・結婚・出産、就職・マイホーム、夢・希望)は「韓国の若者たちの現実」と耳にする。でも格差の拡大・固定化は、この国だけでなく世界中でも…。障壁社会化、新しい階級社会化のしみ込むような進行は他人ごとではありません。アカデミー賞を取る・取らないは別として、見て損のない映画であることだけは間違いありません。年の初めにこの映画が公開されたのも何かのお告げかもしれませんね。(七期生 石倉)

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