『没後50年 藤田嗣治展』鑑賞記 名画鑑賞友の会

日時  2018年10月5日

場所  東京都美術館

参加者 12名

 

 

 日仏を舞台に60余年活躍した没後50年の画家・藤田嗣治。
夏の終わりを告げる秋雨の中、私達は上野の森を訪れた。初めて観る藤田嗣治の大回顧展である。おかっぱ頭に丸メガネ、ちょび髭に金のピアス、そして傍らには猫、当時としてはかなりの個性派だった事を窺わせる。

絵画スタイルの変化
 まず第1章の「原風景」では東京美術学校(現・東京芸術大学美術部)当時の作品に始まり、自画像から婦人像とごく自然に受け入られる画風でしたが、先に進むにつれ絵画スタイル(技法に加え、テーマ)が大きく変わっていくのには驚嘆させられました。

 私の美術館巡りはまだ日が浅いのですが、しかし今回は同じ画家が初期から晩年までこんなにも多くの画風を描けるものかと新たな感銘を受けました。代表的な乳白色の裸婦像は純白とは趣きが異なり、光沢の深みと気品を醸し出して、多くの来場者が顔を近づけ食い入るように見とれるのは納得できます。

 

戦争画・旅と制作
 印象的な乳白色に加えて、「争闘(猫)」・「アッツ島玉砕」・「サイパン島同胞臣節を全うす」も強く心に残る作品でした。藤田嗣治は多数の絵を描くのみならず手製の装飾皿・木箱・額縁、更に縫い物までもする器用で多才な人物でした。

 多くの作品は時の過ぎるのを忘れさせ、藤田嗣治初めモーツァルトも葛飾北斎も、何故天才は旅をしながら多くの名作を残せたのだろうかと考えさせられるひと時でした。

※画像は東京美術館HPより

(対馬加代子 記)

この記事の投稿者

八期生編集チーム