哲学的対話と相互理解
佐々木 一也(RSSC本科ゼミ担当教授)
本科ゼミおよび講義科目を担当している佐々木一也と申します。今年度は春学期に「セカンドステージの哲学対話」を担当しました。この科目では、私の提題が20分、グループ対話が40分、各グループの対話報告が20分、残りはリアクションペーパー執筆という構成でした。毎回例えば「暇になったら何する」「教養は何の役に立つ」「他者とは何か」「長生きの効用は何か」「自由と民主主義を守るために何が必要か」「人はなぜ不合理な物事を信じるのか」などのテーマについて受講生と一緒に考えました。哲学(philosophyギリシャ語起源)は紀元前6世紀頃のギリシャで始まった思想文化です。それは言語、理性、秩序などを意味するロゴス(logos)の働きで世界を理解しようとする考え方です。ロゴスは宇宙の秩序であり人間の思考力でもありました。だから人間は宇宙のこともロゴスを通して理解できると考えられ、そこから自然科学が発展しました。また、哲学は当初から対話を前提としていました。ロゴスは宇宙に遍在するので人間同士にも共通です。人間は論理的(logical)な言語というロゴスで対話(dialog)が出来ます。対話は相手を論破したり優劣を競ったりするものではありません。理性(logos)を研ぎ澄まして協力して秩序原理(logos)に近づこうとする営みです。ところが、人間が持つ別の面すなわち利害の欲望はロゴスを濁らせ、競争と対立を煽ります。現代世界の対立・分断・差別・排除などは哲学の精神の対極にある状態です。何でも市場原理に任せて解決しようとする現代資本主義システムは欲望全開で没ロゴスなのです。この状態を維持している限り、不合理な信念同士の不毛な対立が益々激化するでしょう。今こそ、人々が哲学的対話の精神に目覚めるべき時だと私は思っています。
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