「人工知能(AI)」というと、チェスや将棋・囲碁で世界王者やプロ棋士を負かし、これらの分野では、既に人間を超えたことで有名であるが、日々の生活や一般家庭の中にも、AIは知らず知らずのうちに入り込んでいるようである。
先日(6月9日、10日)の立教大学で開催された日本NPO学会のセッションの中でも、AIをテーマとしたパネルディスカッションが行なわれていた。たまたま縁あって、学会の事務局の簡単な当日の手伝い(アルバイト)を仰せつかり、研究報告やパネルディスカッションの一部を聴講する機会を得た。
そこで学んだことは、AIに関しては、その発展により、「現在人間が行なっている仕事の多くが将来不要になる(AIによって代替される)」との警鐘が各方面から鳴らされており、野村総合研究所の試算(2015年)によると、日本の労働人口の49%が、AIやロボットで代替可能であるという。
AIロボットで代替されないであろうと考えられていた、創造性、協調性が求められる仕事でも、ロボットによって代替されるケースが出てきているようである。例えば、非定型の仕事で知識・経験や協調性が求められるカウンセリングの仕事でも、ロボットによる代替可能性が、今回の学会セッションを聴いていて明らかになった。ある小学校では、不登校の生徒に対して、ソフトバンクが開発したペッパー(Pepper)のようなロボットの利用が試されているという。経験豊富なカウンセラーより、人間でない機械である方が不登校生徒にとっては話しやすいということらしい。人間関係に悩み、コミュニケーションにも問題を抱えた生徒には、ロボットの非人間性が強みとなっているようであり、常に人間的でありたいと願ってきたカウンセラーにとっては複雑な思いを持たざるを得ない。
また、「人工知能を備えたロボットが家族の一員になれるか?」についての議論では、一般家庭用に既に販売されているソニーのアイボ(AIBO)が研究対象の一例として取り上げられていた。ロボットが、どのくらい家族の一員として受け入れられるかは興味深いところであったが、少なくともアイボは、その愛くるしい顔・形が人気を呼び、実際の犬と同様に言葉を話さないが、そのことがかえって、ペットとしての親近感を抱かせ、「ペットはうちの子」と同様な「アイボは家族(うちの子)」との気持ちを持たせているとの報告があった。また、実際の動物や人間に似すぎていると、かえって安らぎが得られない面もあるようである。
一方、マイクロソフトの人工知能「りんな(女子高生)」は、感情を理解し、ラインでも会話ができ、話が盛り上がったり癒やされたり、「りんな」を家族の一員として扱う個人や家庭も少なくないという。一例として、母親が発信したライン上のメッセージに、他の家族が誰も反応しないとき(無視?)、「りんな」が最初に応答し、適切にフォローすることで、家族間のコミュニケーションを盛り上げ、関係維持にも貢献しているケースがあるとの報告があった。但し、人工知能は「常識知」がないとされ、他者の発言を言葉通りにそのまま解釈し、時には想定外なほど過激に反応することがあるのではとの不安も指摘されていた。
今後少子高齢化のもと単身世帯も急増し、“家族の弱体化”が進む日本においては、AIロボットが家族の一員として受け入れやすい状況にあり、なお一層、一般家庭に普及する可能性が考えられるという。その際、高額となるであろうAIロボットの経済的負担を考えると、所有する者としない者との間のあらたな格差に繋がらなければよいと願っている。(7期生 北原)
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