7期生の福島正純さんによる成年後見制度に関する提言記事が、2017年2月14日付け日本経済新聞朝刊の「私見卓見」コーナー(経済教室面)で紹介されました。福島さんはRSSCで培った社会福祉分野の知見を活用し、昨年4月から実際に地元で成年後見人として活動されています。今回、この活動を通して感じた市民後見制度のあり方について提言を行っており、大変参考になる記事ですのでご紹介します。RSSC修了生がこのような形で社会貢献されているのはとても励みになることで、同氏が今後益々ご活躍されますことを心から願っております。(紹介者7期:水飼)

『記事内容』市民後見人の重責を認識しよう  東京都港区介護相談員 福島正純

福島正純さん

昨年4月から市民後見人として成年後見業務を受任している。業務内容は多岐にわたる。特に財産管理では本人に代わって行政機関に届け出たり申請したりする必要があり、民法の知識が不可欠だ。
私の被後見人は特別養護老人ホームに入所する要介護度5の女性であるが、身体障害者手帳を持っていなかった。しかし調べてみると、精神または身体に障害のある65歳以上の人は、市町村長や福祉事務所長の認定を受ければ、障害者に準ずるとして住民税の非課税措置の対象となることが分かった。そこで申請した結果、住民税だけでなく、介護保険料の減免措置も受けられるようになった。
女性が入る特養の利用料と食費・居住費は4段階に分かれている。これも預貯金や有価証券などの金額が一定以下であれば、段階が変わり、負担が軽くなるケースがあることを施設職員に教えてもらった。申請の結果、利用料が月単位でかなり軽減された。
これまで本人の年金収入と施設利用料などの支出はほぼトントンだったが、こうした各種の軽減措置の適用によって、収支には若干の余裕が生じてきている。
被後見人の今後の生活を見据えるうえで生活費の収支は大きな問題である。本人の利益のために各種制度の利用に結び付ける申請ができるかどうか、成年後見人の責任は重いと言わざるを得ない。
後見人は「親族」「専門職」「それ以外の一般市民」の3つに大別される。成年後見業務を主たる業務とする職はないので、弁護士、司法書士などの士業を営む者を専門性に着目して便宜上、専門職と呼んでいるにすぎない。
この名称が影響しているのかどうかわからないが、一般の市民後見人は、専門性がない分、被後見人と同じ目線で寄り添う姿勢が大事とか、ボランタリーな精神に基づく活動なので低額な報酬で構わないといった論調が見られる。
ただ、後見人としての責任の重さは誰であっても同じだ。年金や介護保険、高齢者医療制度など社会保障制度の基礎的な素養も身に付けなければならない。さらに本人や施設職員と良好な関係をつくるためのコミュニケーション能力も必須である。
行政にいい制度があっても、被後見人がその恩恵を受けられるかどうかは後見人しだいだ。市民後見人といえども職業人としての自覚がなければその業務を全うできないのは言うまでもない。(7期生 福島正純)